亜硝酸アミル(読み)あしょうさんあみる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「亜硝酸アミル」の意味・わかりやすい解説

亜硝酸アミル
あしょうさんあみる

化学的には亜硝酸-n-アミルCH3CH2CH2CH2ONOや亜硝酸イソアミル(CH3)2CHCH2CH2ONOなど、アミルアルコール異性体の亜硝酸エステル総称として用いられるが、医薬面では亜硝酸イソアミルの通称名として使われる。亜硝酸アミルは冠血管拡張剤で、19世紀以来、狭心症発作の救急薬として使われてきた。淡黄色で果実のような香りを有する液体で、細い管状のアンプルに0.25ミリリットル入ったものが市販されている。発作時に、アンプルを割り、ガーゼに吸収させて鼻先にあてて吸入する。1回の使用量は0.2ミリリットル、承認投与量の上限は1回0.25ミリリットル。劇薬。30秒以内に作用し、5~10分くらい効果が持続する。なお、狭心症発作には現在おもにニトログリセリンや硝酸イソソルビドが使われている。

[幸保文治]

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百科事典マイペディア 「亜硝酸アミル」の意味・わかりやすい解説

亜硝酸アミル【あしょうさんアミル】

亜硝酸イソペンチルともいう。イソアミルアルコールの亜硝酸エステル。(CH32CHCH2CH2ONOを主成分とする淡黄色の液体。冠状血管拡張作用があり,狭心症に用いる。0.1〜0.3mlを布片に吸収させ鼻孔にあてて吸入させると即効的に発作をやわらげる。大量に吸入すると呼吸障害を起こす。青酸中毒応急処置などにも用いる。

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世界大百科事典(旧版)内の亜硝酸アミルの言及

【エステル】より

…ダイナマイトの基剤としてよく知られているニトログリセリンはグリセリンの硝酸エステルで,正しくは三硝酸グリセリンと呼ばれ,グリセリンを冷却した1:1混酸(硫酸+硝酸)中に滴下して得られる。亜硝酸アミルC5H11ONOは快香をもつ液体(沸点96℃)で,血管を拡張する作用があるため狭心症の治療薬として用いられる。リン酸のエステルであるリン酸トリエチルは無色の液体(沸点216~217℃)で,ニトロセルロースや酢酸セルロースの溶剤として用いられたり,ゴムや合成樹脂の可塑剤として用いられる。…

※「亜硝酸アミル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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