井上勤(読み)イノウエツトム

デジタル大辞泉 「井上勤」の意味・読み・例文・類語

いのうえ‐つとむ〔ゐのうへ‐〕【井上勤】

[1850~1928]翻訳家。徳島の生まれ。大蔵省文部省などに勤めるかたわら、ベルヌ月世界一周」、トマス=モア良政府談」、デフォー魯敏孫ロビンソン漂流記」などを翻訳し、明治初期西洋文学の移入に貢献した。

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精選版 日本国語大辞典 「井上勤」の意味・読み・例文・類語

いのうえ‐つとむ【井上勤】

翻訳家。翻訳「良政府談(ユートピア)」「人肉質入裁判(ベニス商人)」「絶世奇談魯敏孫漂流記ロビンソン‐クルーソー)」など。嘉永三~昭和三年(一八五〇‐一九二八

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百科事典マイペディア 「井上勤」の意味・わかりやすい解説

井上勤【いのうえつとむ】

翻訳家。阿波国生れ。大蔵省関税局翻訳掛,文部省などに勤務。明治10年代,ジュール・ベルヌなどの翻訳で一世を風靡し,明治初期翻訳文学の第一人者となった。ベルヌ物に《九十七時二十分間 月世界旅行》《月世界一周》《亜非利加内地三十五日間 空中旅行》《六万英里 海底紀行》,またシェークスピアの《ベニスの商人》の翻訳《人肉質入裁判》,《ロビンソン・クルーソー》の翻訳《魯敏孫漂流記》,《アラビアン・ナイト》の翻訳《全世界一大奇書》などがある。

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朝日日本歴史人物事典 「井上勤」の解説

井上勤

没年:昭和3.10.22(1928)
生年:嘉永3.9.15(1850.10.20)
明治時代の翻訳家。阿波(徳島)生まれ。号は春泉。父はシーボルトに洋法医学を学んだ井上不鳴。7歳のとき,父の縁故でドンケル=クルティウスに英語を学び始めたという。明治14(1881)年から大蔵省,のちに文部省で翻訳掛をしながら西洋小説を多数翻訳した。ヴェルヌ『月世界旅行』,E.G.E.リットンの《A Strange Story》の訳『竜動鬼談』(共に1880年),トマスモアのユートピアの訳『良政府談』(1882),シェイクスピアヴェニスの商人の訳『人肉質入裁判』,デフォーの『魯敏孫漂流記』(ともに1883年)など。神戸にて老衰のため死去。夫人は内田魯庵の叔母吉沢鉱子。<参考文献>柳田泉『明治初期翻訳文学の研究』

(加納孝代)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「井上勤」の解説

井上勤 いのうえ-つとむ

1850-1928 明治-昭和時代前期の翻訳家。
嘉永(かえい)3年9月15日生まれ。井上不鳴の長男。幼時から英語,のちドイツ語をまなび,明治13年上京。大蔵省,文部省などにつとめ,かたわら西洋の小説をおおく翻訳した。昭和3年10月22日死去。79歳。阿波(あわ)(徳島県)出身。号は春泉。訳書にベルヌの「月世界旅行」,トマス=モアの「良政府談」,デフォーの「魯敏孫(ロビンソン)漂流記」など。

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世界大百科事典(旧版)内の井上勤の言及

【ロビンソン・クルーソー】より

…ドイツ語には〈ロビンソン・クルーソーもの〉を意味する〈ロビンゾナーデRobinsonade〉という言葉も生まれ,フランス語の俗語〈ロバンソンrobinson〉はロビンソンが用いていたような大型こうもり傘を意味する。日本では早くも幕末にオランダ語訳からの重訳が出版されたが,原文からの翻訳としては井上勤《絶世奇談 魯敏遜(ロビンソン)漂流記》(1883)が初期のものとしては注目に値する。【榎本 太】【山本 泰男】。…

※「井上勤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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