五倍子(読み)フシ

デジタル大辞泉 「五倍子」の意味・読み・例文・類語

ふし【五子/付子/附子】

ヌルデ若芽若葉などにアブラムシが寄生してできる虫癭ちゅうえい虫こぶ)。紡錘形で、タンニンを多く含み、インク染料製造に用いる。昔はお歯黒に用いられた。ごばいし。 秋》「山の日は―のむしろに慌し/青畝

ごばい‐し【五倍子】

ふし(五倍子)

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精選版 日本国語大辞典 「五倍子」の意味・読み・例文・類語

ごばい‐し【五倍子】

〘名〙 ヌルデの葉茎にできる虫こぶ。ヌルデミミフシが寄生して生じるもので、殻にタンニンを多量に含み薬用として用いられるほか染織やインク製造に用いられる。ふし。《季・秋》
※全九集(1566頃)五「河豚のどくをば五倍子・明ばんにて解す」

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改訂新版 世界大百科事典 「五倍子」の意味・わかりやすい解説

五倍子 (ごばいし)

ウルシ科ヌルデ属Rhus樹木の葉の付け根にできる虫こぶを乾かしたもの。タンニン酸原料である。ヌルデシロアブラムシ幼虫などが寄生するときつけた傷および樹幹内で生育する幼虫の運動などの刺激により,それを取り囲む樹木の組織が肥大し,変質して虫こぶとなる。大きさは長さ8cm,幅1~6cm。幼虫の羽化前に採集したものが使われる。五倍子は虫の死体を含み,そのほかの部分の主成分はタンニン酸で50~70%,他はデンプン,蠟(ろう)などである。タンニン酸はグルコース没食子酸が5~9個ついたもので,加水分解型タンニンと呼ばれる。医薬媒染剤などに使われる。日本のヌルデおよび中国のタイワンフシノキなどに生ずる。日本は使用量のすべてを中国などから輸入している。
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百科事典マイペディア 「五倍子」の意味・わかりやすい解説

五倍子【ごばいし】

付子(ふし)とも。ウルシ科植物のヌルデ等の葉にヌルデシロアブラムシが与えた刺傷より生じた虫こぶを乾燥したもの。長さ8cm,径6cmほどの不整に分岐した灰黄〜黄褐色の袋状物質。内部の空洞に死虫や虫蝋を包有することがある。主成分はタンニン酸で,医薬品のタンニン酸やインキ,染料の製造原料として用いる。
→関連項目キブシ収斂薬タンニンヌルデ没食子

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五倍子」の意味・わかりやすい解説

五倍子
ごばいし

ヌルデ

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動植物名よみかた辞典 普及版 「五倍子」の解説

五倍子 (ゴバイシ)

植物。ウルシ科の落葉小高木,薬用植物。ヌルデの別称

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世界大百科事典(旧版)内の五倍子の言及

【ヌルデ(白膠木∥塩麩子)】より

…ヌルデシロアブラムシの仲間が寄生して葉に虫こぶをつくる。それを五倍子(附子(ふし))とよぶので,一名フシノキともいう。フシは薬用,染料としてのタンニン原料である。…

【虫こぶ】より

…虫こぶを作る動物は99%が昆虫で,ほかにダニ,クモ,糸状虫がある。とくにブナ科植物に作るインクタマバチの虫こぶを没食子,ヌルデ属植物に作るアブラムシ類の虫こぶを五倍子と呼び,タンニンの原料とする。しかし,作物,果樹にできた虫こぶは,生育の妨げとなる。…

※「五倍子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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