二項分布(読み)ニコウブンプ

デジタル大辞泉 「二項分布」の意味・読み・例文・類語

にこう‐ぶんぷ〔ニカウ‐〕【二項分布】

ある試行において、事象Eが起こる確率p、起こらない確率をqとし、独立n回試行するとき、その事象Er回起こる確率nCrprqn-r分布状態

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精選版 日本国語大辞典 「二項分布」の意味・読み・例文・類語

にこう‐ぶんぷ ニカウ‥【二項分布】

〘名〙 確率分布一つ。ある試行で、確率事象Eの起こる確率がpであるとする。この試行をn回独立に行なうとき、Eの起こる回数をxとするとxは0、1、2、…、nというn通りの値をとる確率変数で、x=k となる確率は nCkpkqn-k (k=0,1,2,…,n かつ、q=1-p)となる。この確率変数xの分布をいう。nCkpkqn-k が二項式 p+q のn乗を展開したときの一般項であるところからこの名がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「二項分布」の意味・わかりやすい解説

二項分布
にこうぶんぷ

ある試行において事象Eのおこる確率をpとする。この試行を独立にn回繰り返す場合にEのおこる回数をXと置くと、Xは確率変数であって、X=kとなる確率pk=P(X=k)は、q=1-pとして次式で与えられる。

  pk=nCkpkqn-k
     (k=0,1,……,n)
この確率分布を二項分布といい、B(n,p)と表す。

〔例1〕さいころを4回投げて、そのうちちょうど2回6の目の出る確率は

である。

 前記のnCkpkqn-kは、(q+p)n二項定理によって展開した式
  nC0qn+nC1pqn-1+……
   +nCkpkqn-k+……+nCnpn
の項になっている。二項分布B(n,p)において、kを横軸に、pk縦軸にとって(k=0,1,2,……,n)、折れ線グラフをつくると次のようになる。k0=np+p-1が整数であれば、pkはk<k0単調増加、k=k0,k0+1で最大値をとり、k>k0+1で単調減少である。np+p-1が整数でなければ、np+p-1の整数部分をk0とするとpkはk<k0で単調増加で、k=k0で最大値をとり、k>k0で単調減少である。初めに述べた二項分布の定義から次のことが導かれる。確率変数X1、……、Xnは独立で
  P(Xi=1)=p, P(Xi=0)=q=1-p
  (i=1,……,n)
とする。このとき確率変数
  X1+X2+……+Xn
の確率分布は二項分布B(n,p)である。二項分布B(n,p)の平均値はnp、分散はnpqであり、特性関数は(peit+q)nである。

〔例2〕さいころを500回投げるとき、1の目が80回以上出る確率pを求めよ。

 求める確率pは

であるが、この値を直接計算することは容易でない。このような形の問題に対しては、次のように正規分布表を用いて計算を行う。二項分布の正規分布による近似確率変数Xの分布が二項分布B(n,p)であるとき、nが大きければ、確率変数

の分布は標準正規分布に近い(ラプラス定理)。このことを利用して前の〔例2〕の確率pの近似値を求めることができる。0≦a<b≦nである二つの整数a、bに対して、p(a≦X≦b)はの青色部分の面積で、これはXと同じ平均および分散をもつ正規分布N(np,np(1-p))のグラフとx軸および2直線
  x=a-0.5, x=b+0.5
で囲まれた部分の面積とほぼ等しい。したがって、Zの分布を標準正規分布として

と置けば、次の近似式が成り立つ。

  P(a≦X≦b)≒P(α≦Z≦β)
この式により正規分布表を用いて〔例2〕のpを求めるとp=0.67が得られる。

[古屋 茂]


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改訂新版 世界大百科事典 「二項分布」の意味・わかりやすい解説

二項分布 (にこうぶんぷ)
binomial distribution

毎回独立に同じ偶然に支配される試行を繰り返す場合,各試行で二つの可能性(かりにそれらを成功および失敗と呼ぶ)しかないとき,これをベルヌーイ試行という。成功および失敗の確率が,それぞれpq=1-pであるn回のベルヌーイ試行において,ちょうどk回成功する確率をbk;np)とかけば,

 bk;np)=nCkpkqnk

         (k=0,1,……,n

である。これを二項分布という。この分布の平均値はnpで分散はnpqである。確率bk;np)はkが0から増加していくとき,k<(n+1)pの範囲では増加し,k>(n+1)pのときはkとともに減少する。もし(n+1)pk0となる整数k0があるときはbk0;np)=bk0-1;np)となる。

 この分布を平均値0,分散1となるように規格化して,すなわち,直線上の点(ただしk=0,1,……,n)に確率bk;np)を置いて得られる分布は,nが十分大きいとき,図のように標準ガウス分布に近いことが知られている(ド・モアブル=ラプラスの定理)。一方,nが大きくてもpが十分小さく,npがふつうの大きさであるときには,np=λとおいて,ポアソン分布pk,λ)(ただしk≧0)でよく近似される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二項分布」の意味・わかりやすい解説

二項分布
にこうぶんぷ
binomial distribution

応用上しばしば用いられる確率分布の一つ。たとえば○×式で答える問題があるとし,この問題にまったくでたらめに答えて,10問中 8問が正答になる確率を求めるには,独立試行の回数 n=10,10問中正答になる回数 r=8,でたらめに○×をつけるから○をつける確率 p=1/2,また q=1-p=1/2とおいて,次の公式を適用すればよい。いまその確率を Pr(Xr)とおくと,

Pr(Xr)=nCrpr(1-pn-r

すなわち,上の問題の答は

Pr(X=8)=10C8(1/2)8(1/2)10-8=0.044

となる。
ここに で,二項係数である。一般にある事象 E の起こる確率を p とするとき,n 回の独立試行を繰り返すときに事象 E が現れる回数を指示する確率変数を X,実際に起こる回数を一般に rr=0,1,…,n)で示すと,X が値(実現値)r をとる確率 Pr(Xr)が nCrpr(1-pn-r で与えられ,二項分布といわれる。Xn+1の値でしか正の値の確率をもたないから離散的である。

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百科事典マイペディア 「二項分布」の意味・わかりやすい解説

二項分布【にこうぶんぷ】

x=0,1,2,…,nのそれぞれの値が出現する確率が (/n)C(/x)p(x/)(1−p)(n/)(-/)(x/)で与えられる分布(0<p<1)。(/n)C(/x)はn個のものからx個を選ぶ組合せの数,つまり二項係数。平均値はnp,標準偏差は(式1)。たとえば不良率pの母集団からとったn個のサンプル中の不良品の個数xはこの分布に従う。→二項定理

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法則の辞典 「二項分布」の解説

二項分布【binomial distribution】

離散分布の一つ.その確率関数は

fx)=nCxpx(1-px

となる.

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栄養・生化学辞典 「二項分布」の解説

二項分布

 ある事象Aが起こる確率がPである場合,試行をn回繰り返したとき,Aがx回起こるとしたときのxの分布.

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世界大百科事典(旧版)内の二項分布の言及

【確率】より

…そのとる値は0,1,2,……,nで分布{pk;0≦kn}はpknCkpkqnkである。これを二項分布という。これは重要な離散形分布の例で,応用上もよく現れる。…

【確率分布】より

… 重要なのはF1F2で,F1は連続型,F2は離散型であるという。
[離散型分布]
 (1)もっとも重要なものは二項分布であり,F(x)はx=0,1,……,nのみで増加し,xkでの跳びはnCkpkqnk(q=1-p)である。これは成功する確率がpであるn回のベルヌーイ試行における成功する回数の分布である。…

※「二項分布」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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