二酸化ケイ素(読み)ニサンカケイソ

化学辞典 第2版 「二酸化ケイ素」の解説

二酸化ケイ素
ニサンカケイソ
silicon dioxide

SiO2(60.09).シリカ,無水ケイ酸ともいう.岩石中に石英として多量に産出する無色の化合物.そのほか,めのうオパール(たんぱく石),玉髄水晶として産出する.石英がとくに純粋な形で集合したものは石英砂またはけい砂とよばれ,光学ガラス光ファイバー水晶発振器などに用いられ,ケイ酸塩工業上,重要な資源となっている.構造は無定形のものから,高圧下で安定なものまで,種々の多形が存在し,スチショバイトを除いてSi-O四面体構造単位のすべての角が共有された三次元網目構造である.【】無定形二酸化ケイ素:可溶性ケイ酸塩水溶液に酸を加え,生じた沈殿を乾燥させると得られる.空気中の水分などを吸着する能力がある([別用語参照]シリカゲル).二酸化ケイ素の多形中,もっとも化学的に活発である.温泉から沈殿したものは水を含み,ケイ華とよばれる.天然にオパール,ルシャトリエライトとしても産出する.シリカゲル,クロマトグラフィー用吸着剤として利用される.ガラス,陶磁器セラミックス,研磨剤,コンクリートの製造などに用いられる.[CAS 60676-86-0:SiO2(vitreous)]【】石英:無色の結晶.低温形(α石英:三方晶系)と高温形(β石英:六方晶系,いわゆる水晶)とがある.転移温度573 ℃.密度2.635~2.660 g cm-3.融点1610 ℃,沸点2230 ℃.水に不溶,フッ化水素酸以外の酸に不溶.Na2CO3やK2CO3の融解物と反応してケイ酸塩となり,水に溶ける.[CAS 7631-86-9:SiO2][CAS 14808-60-7:SiO2quartz)][CAS 14808-60-7:SiO2(β quartz)]【トリジマイト(りんけい石):斜方晶系.密度2.26 g cm-3.融点1703 ℃,沸点2230 ℃.化学的性質は石英にほとんど同じ.α,β形の2種類の多形がある.[CAS 15468-32-3:SiO2(tridymite)]【クリストバライト:立方または正方晶系に属する.密度2.32 g cm-3.融点1713±5 ℃,沸点2230 ℃.α,β形がある.[CAS 14464-46-1:SiO2(crystobalite)]【コーサイト,スチショバイト:ともに高圧下で安定で,前者は0 ℃ で2×104 atm,後者は 105 atm 以上で安定である.また,後者はルチル型構造をもつ.いずれも合成により得られるが,天然ではいん石孔の周辺に見いだされた.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「二酸化ケイ素」の意味・わかりやすい解説

二酸化ケイ素
にさんかけいそ
silicon dioxide

ケイ素と酸素の化合物。通称シリカ、また無水ケイ酸、あるいは単にケイ酸と俗称することもある。とくにケイ酸塩を取り扱う分野ではシリカという場合が多い。天然には結晶性の純粋な三変態、すなわち、石英(水晶も含まれる。六方・三方晶系)、鱗珪石(りんけいせき)(トリジマイト、六方・斜方晶系)、クリストバル石(立方・正方晶系)があり、非晶質のもの(石英ガラス)や微結晶質石英として玉髄(ぎょくずい)、碧玉(へきぎょく)、めのう、火打石(ひうちいし)などがある(図A)。水晶にも紫水晶、煙水晶、黄水晶、紅水晶などがある。さらに水和物としてオパールや珪藻土(けいそうど)がある。石英は長石類についでもっとも豊富に存在し地殻の12%を占めていて、地球上に広く分布している。市販品は結晶あるいはガラス状の石英が普通であって、水熱合成によってつくられるものが多い。純粋なものは無色。結晶は、SiO4四面体のO原子がすべて共有され、三次元につながった巨大分子構造をもち、そのSiO4の配列の違いで結晶形が異なってくる(図B)。配列が不規則なものが無定形シリカあるいは石英ガラスである。温度、圧力に応じて結晶系の異なるものが安定となる。溶融体を冷却するとガラス状になりやすい。水和物は多くシリカゲルまたはシリカゾルとして市販されている。シリカゲルはケイ酸ナトリウム(水ガラス)水溶液と硫酸または塩酸などとの複分解によって得られるシリカゾルをゲル化させたものである。フッ化水素や融解アルカリ以外の化学薬品に対しては安定である。フッ化水素によって四フッ化ケイ素を生じ、水酸化アルカリや炭酸アルカリと溶融すると、水に可溶性のアルカリケイ酸塩を生じる。石英ガラスは熱膨張係数が小さく、紫外線を通す特性が利用される。最近では光ファイバー用として広く用いられている。水晶、オパールは宝石装飾用、水晶発振器に用いられる。硬いので研摩用に使う。無定形のもの、とくにシリカゲルSiO2nH2Oは吸着剤、乾燥剤として用いられ、とくに食品乾燥用には広く利用されている。そのほか単体ケイ素やケイ素化合物の原料となる。

[守永健一・中原勝儼]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二酸化ケイ素」の意味・わかりやすい解説

二酸化ケイ素
にさんかケイそ
silicon dioxide

化学式 SiO2 。シリカ,無水ケイ酸,あるいは単にケイ酸ということもある。天然には石英,鱗ケイ石,クリストバル石の3型のほか,ガラス状,コロイド状としても産出する。無色透明の固体であるが,天然に産する水晶,玉髄,瑪瑙,火打石などは多く着色している。無定形の比重 2.2,結晶の比重 2.6。水,酸に不溶であるが,フッ化水素酸には容易に溶ける。ガラス,水ガラス,セラミックス,耐火材料などの製造,油,石油の脱色精製,フェロシリコン,カーボランダムの製造などに広く利用される。

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栄養・生化学辞典 「二酸化ケイ素」の解説

二酸化ケイ素

 →シリカ

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