二水記(読み)にすいき

改訂新版 世界大百科事典 「二水記」の意味・わかりやすい解説

二水記 (にすいき)

中納言鷲尾隆康(1485-1533)の日記。欠年があるが1504年(永正1)より33年(天文2)にわたる。書名二水年号永正の〈永〉に由来し,〈正〉により《一止記(いつしき)》の異称をもつ。戦乱の時代に,凋落をたどる公家社会の内情を記し,とくに記主が途絶した朝儀復興に参画したため,有職故実にかかわる記事が豊富に収められる。自筆本20冊が内閣文庫に現存するほか,多数写本がのこされる。《史籍集覧》に一部所収。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「二水記」の意味・わかりやすい解説

二水記
にすいき

戦国時代記録。『一止記(いっしき)』ともいう。権中納言(ごんちゅうなごん)鷲尾隆康(わしのおたかやす)の日記。記事は1504~33年(永正1~天文2)にわたる。二水は年号の永正の永字を、また一止は正字を分解したもの。荘園(しょうえん)の解体と戦乱とによって没落してゆく公家(くげ)社会の状況と朝儀の衰微を描写するほか、細川氏の分裂抗争や将軍足利義材(あしかがよしき)(義稙(よしたね))の入京と出奔など畿内(きない)の政治的混乱を克明に記し、その間に台頭する一向一揆(いっこういっき)や法華(ほっけ)一揆、町衆(ちょうしゅう)など戦国期の京都をめぐる諸状況を知る好資料。国立公文書館に自筆本20冊が所蔵されている。一部は『史籍集覧』(改訂)に収載。

[今谷 明]

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百科事典マイペディア 「二水記」の意味・わかりやすい解説

二水記【にすいき】

戦国時代の権中納言(ごんのちゅうなごん)鷲尾隆康(わしのおたかやす)の日記。《一止記(いっしき)》ともいう。記事は1504年(永正1年)から1533年(天文2年)に及ぶが,間に散逸した部分がある。書名の〈二水〉は永正の年号の〈永〉を,〈一止〉は同じく〈正〉を分解したものという。戦国期の没落した公家の社会などを記述する一方,有職(ゆうそく)故実についての記事も多数収められている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二水記」の意味・わかりやすい解説

二水記
にすいき

権中納言鷲尾隆康 (1485~1533) の日記。『一止記』ともいう。『二水記』は「永正」の「永」の字から,『一止記』は「正」の字からとって名づけたもの。自筆原本 20冊。永正1 (1504) ~天文2 (33) 年の記録で,その間,欠文もあるが,公家の生活を知るうえで貴重な史料。

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