二分脊椎、髄膜瘤、Chiari II型奇形

内科学 第10版 の解説

二分脊椎、髄膜瘤、Chiari II型奇形(先天奇形)

(4)二分脊椎(spina bifida),髄膜瘤(meningocle)(図15-13-4),ChiariⅡ型奇形(図15-13-5))
概念
 二分脊椎は胎芽期の神経管の閉鎖不全により脊椎弓が開放され,脊髄および脳の形成異常の原因となる.腰仙部に好発し,結果として胎生期に髄膜および脊髄が背部へ脱出し髄膜瘤を形成する.また,髄膜瘤が破裂することにより髄液が漏出し,脳幹延髄が大後頭孔内に嵌入するとChiariⅡ型(Arnold-Chiari)奇形となる.
 二分脊椎は下記のように分類される.①潜在性二分脊椎(spina bifida occulta):腰仙部の脊椎弓の形成不全のみで,髄膜瘤を伴わない.頑固な便秘や神経因性膀胱の原因となることがある.②囊胞性髄膜瘤:腰部背側に突出した囊胞状の腫瘤を認める.皮膚に覆われている場合と,皮膚は欠損し髄膜が露出している場合がある.③脊髄披裂:生下時に髄膜瘤部は破裂しており,脊髄組織が欠損した皮膚部に観察される状態になっている.④脳瘤:後頭部正中に生じることが多い.
病因
 神経管の閉鎖には,葉酸が関係しており,本症の危険因子として葉酸代謝異常(tetrahydrofolate reductaseの遺伝子多型)や妊婦の抗てんかん薬内服(特にバルプロ酸)が知られている.わが国での発生頻度は少なく10000人に6人の頻度である.
臨床症状
 髄膜瘤は生下時に隆起として直接観察される.また,腰部背中の皮膚に,管状のくぼみである皮膚洞や異常毛髪などの所見を認めた場合には,二分脊椎の存在を示唆する重要な所見である. 二分脊椎および腰仙部髄膜瘤の神経症候として,下肢の弛緩性麻痺,深部腱反射消失,内反足,痛覚消失,膀胱直腸障害による神経因性膀胱や便失禁または便秘を認める. ChiariⅡ奇形では,延髄障害として,嚥下障害,声帯麻痺,息止めなどを認める.高頻度に水頭症を合併する.
治療
 最近は胎児期に超音波検査で出生前から診断されることも多く,新生児期に髄膜瘤および水頭症に対して修復術およびシャント術を行われる場合が多い. また,神経因性膀胱に対しては間欠的導尿を行う.
予防
 二分脊椎の予防効果を期待して,妊娠可能な女性が葉酸を含むバランスのとれた食事をとることと併せて,妊娠前4週から妊娠12週まで,葉酸サプリメントを1日400/μg(=0.4 mg)内服することも推奨されている.[岡 明]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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