二人袴(読み)ふたりばかま

精選版 日本国語大辞典 「二人袴」の意味・読み・例文・類語

ふたりばかま【二人袴】

狂言。各流。婿入りする男が親と二人で舅(しゅうと)の家へ行き、一着の袴しかないため親と二人で舅に袴姿を見せようと苦労するが、ついに見つけられて恥をかく。「天正狂言本」に「袴裂き」、「狂言記」に「相合袴」とある。

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デジタル大辞泉 「二人袴」の意味・読み・例文・類語

ふたりばかま【二人袴】

狂言。婿入りする男が父親しゅうとの家に行き、1着の袴で親と交代に舅の前に出る。二人一緒に出るよう求められ、袴を二つに裂いてそれぞれ前に当てて取り繕うが、舞をまううちに見つかる。

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改訂新版 世界大百科事典 「二人袴」の意味・わかりやすい解説

二人袴 (ふたりばかま)

狂言の曲名。聟狂言。大蔵,和泉両流にある。世間知らずの聟は,聟入りに1人で行くのが恥ずかしく,親に,舅(しゆうと)の家の門前まで付き添ってもらう。親はただちに引き返すつもりだったが,舅宅の太郎冠者に見つけられ,そろって座敷へ出るようにと請われる。しかし,袴が1枚しかないので,2人で代わる代わるにはき換えて舅の前に出て挨拶をする。さて,両人いっしょにと呼ばれて当惑した親子は,袴を前後2枚に引き裂いて,めいめい前垂れのように前に当てて座敷へ出る。酒宴が催され,所望されるままに舞を舞うが,聟も親も袴の後ろのないのを見つけられ,面目ないと退散する。登場は聟,親,舅,太郎冠者の4人で,聟がシテ。曲中の小舞(こまい)は,大蔵流は《盃》《桑の弓》《雪山》,和泉流は《宇治の晒(さらし)》《花の袖》《七つ子》。無器用な長袴の足さばき,酒宴の席での無遠慮な応答など,幼稚で無邪気な聟の性格がほほえましく描かれる。1894年《二人袴(ににんばかま)》の題名で,福地桜痴脚色により歌舞伎舞踊化されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「二人袴」の意味・わかりやすい解説

二人袴
ふたりばかま

狂言の曲名。聟(むこ)狂言。聟(シテ)が、1人で聟入り(結婚後初めて舅(しゅうと)を訪ね、盃(さかずき)を交わす儀式)するのは恥ずかしいというので、父親が同道し、舅の家の前で袴を着けてやる。門前に親を待たせたまま、聟は舅に初対面の挨拶(あいさつ)をするが、親の同伴がわかってしまい、父親も座敷へ招かれる。ところが、祝儀の場に着用すべき袴は聟の分しかないので、門前で急いではきかえ、交替で1人ずつ舅の前へ出る。2人共に出るよう求められて困った親子は、袴を前後に引き裂き、それぞれ前垂れのように前に当て、座敷へ通る。盃事(さかずきごと)のあと舞を所望され、聟は後ろを見せないようにごまかしながら舞うが、親子は舅に誘われ3人連舞(つれまい)で舞ううち、袴の後ろのないことが露見する。聟が後ろを気にしながらぎこちなく舞う所作のおもしろさが見どころ。この曲に取材した歌舞伎(かぶき)舞踊に福地桜痴(ふくちおうち)脚色の『二人(ににん)袴』があり、1894年(明治27)6月東京歌舞伎座で初演された。

[林 和利]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「二人袴」の解説

二人袴
〔長唄, 常磐津〕
ににんばかま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
福地桜痴
初演
明治27.6(東京・歌舞伎座)

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