二クロム酸塩(読み)ニクロムサンエン

化学辞典 第2版 「二クロム酸塩」の解説

二クロム酸塩
ニクロムサンエン
dichromates

一般式M2Cr2O7の一般に赤橙色の塩.遊離酸は得られていない.重クロム酸塩は旧名で現行命名法では正しくない.IUPAC体系名はヘプタオキシド二クロム酸塩.工業的には,クロム鉄鉱にNa2CO3石灰を加えてばい焼し,水で抽出し,これに硝酸を加えて微酸性にし,濃縮するとNa塩が得られる.KClとの複分解でK塩も得られる.各金属クロム酸塩を硝酸などで微酸性にしたり,金属水酸化物とCrO3とを反応させるなどで,ほかの金属の塩も得られる.結晶は1個のO原子を共有して2個の四面体型のCrO4が結合したCr2O72-を含む.アルカリ金属塩は水に可溶.水溶液はアルカリ性にするとCrO42-となり,黄色になる.酸性水溶液は酸化性が強い.

Cr2O72- + 14H + 6e → 2Cr3+ + 7H2O

酸化剤に用いられるほか,染料,医薬品,火薬顔料などの製造にも用いられる.六価クロム化合物であるから化学物質排出把握管理促進法・特定1種指定.毒劇法では重クロム酸塩として劇物指定.労働安全衛生法・名称等を通知すべき危険物及び有害物指定.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の二クロム酸塩の言及

【二クロム酸】より

…強酸で,強い酸化剤である。 クロム酸アルカリ塩の水溶液に酸を加えて濃縮すると二クロム酸塩が得られる。多くは橙赤色の結晶で,強力な酸化剤としての働きがあり,染料,医薬用,火薬などに広い用途をもつ。…

※「二クロム酸塩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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