朝日日本歴史人物事典 「乳井月影」の解説
乳井月影
生年:文政5(1822)
江戸後期・明治期の根笹派錦風流尺八の奏者。幼名は永助,本名は建朝。根笹派はもともと普化宗(17世紀ごろ成立)の初期にあった16派のうちの1派で,のちに津軽弘前に伝わり,武士のたしなみとして演奏され,幕末ごろから錦風流と称するようになった。その名の由来は,実質的な家元といわれる月影が,近衛家警護の武士として選ばれて上洛中の元治1(1864)年,「松風」という曲を吹奏したときに,近衛忠煕から贈られた大和錦の袋の「錦」と,その曲名の「風」をとって名づけたという逸話が伝わっている。門人の永野旭影,折登如月,津島孤松により錦風流尺八は全国的に広まることとなった。
(志村哲)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報