乳がん検診(読み)にゅうがんけんしん

知恵蔵 「乳がん検診」の解説

乳がん検診

乳がん早期に発見し、適切な治療を行うことでがんによる死亡を減少させることを目的とした検査のこと。がん検診は、健康増進法に基づく健康増進事業として市町村が実施しており、その中で乳がん検診は40歳以上の女性を対象として、マンモグラフィによる検診を受けることが推奨されている。
マンモグラフィとは、板と板の間乳房を挟んで圧迫し、薄くのばして撮影する放射線検査のこと。しこりなどの自覚症状がない、ごく小さながんでも発見できる可能性がある。
日本では、2年に1回の乳がん検診が推奨されている。これは「がん検診に関する検討会(厚生労働省)」において適切であると判断された間隔であり、毎年検診を受けた場合とほぼ同様の有効性があるとされている。また、マンモグラフィによる放射線の被ばくは、主に乳房だけに限定される。健康への影響はほぼないと考えられている。
乳がんは、女性がかかるがんの中で一番多いがんである。2014年にはおよそ7万6000人の女性が新たに乳がんだと診断されている。また、乳がんによる死亡率は、大腸がん肺がん膵臓(すいぞう)がん、胃がんに続く第5位である。
日本では、乳がんの発生率増加一途をたどっており、それに比例する形で乳がんによる死亡率も増加している。しかし、アメリカイギリスでは、乳がんの発生率は増加しているにもかかわらず、乳がんの死亡率は減少している。これは、乳がん検診受診率の高さが影響していると考えられている。アメリカの乳がん検診の受診率は80.8%(12年)、イギリスでは75.9%(13年)。一方、日本は44.9%(16年)であった。
40歳以上の女性を対象としたマンモグラフィによる乳がん検診は、乳がんによる死亡率を減らす効果があることが科学的に確認されている。ただし、その効果を出すためには、定期的に検診を受け、異常を指摘されたら精密検査を受け、乳がんだと診断された場合は、早期に治療を開始することが重要である。乳がんの5年生存率は、早期(ステージⅠ、Ⅱ)では90%を超えるが、ステージⅣの5年生存率は40%台となる。つまり、乳がんを早く見つけ、早く治療することが、乳がんによる死亡を減らすことにつながる。日本では、特に乳がんの検診率が低いことが指摘されており、検診率の引き上げが課題となっている。
また、40歳未満の女性に対するマンモグラフィによる検診の効果は報告されていない。40歳未満では乳腺が発達しているため、マンモグラフィでは乳房全体が白く写ってしまい、異常が見つけにくくなるためである。そのため、40歳未満の女性では、超音波検査と視触診などによる検査が勧められているが、公的な乳がん検診は実施されておらず、自費で検査を受けることになる。

(星野美穂 フリーライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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