九卿(読み)きゅうけい

精選版 日本国語大辞典 「九卿」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐けい キウ‥【九卿】

〘名〙
① 古代中国の九つの高官。その職名には時代によって変化があり、たとえば、周代では、少師、少傅(しょうふ)、少保、冢宰(ちょうさい)司徒宗伯、司馬、司寇、司空。漢代では、太常、光祿勲、衛尉、太僕、廷尉大鴻臚、宗正、少府大司農など。〔礼記‐月令〕
② 日本で、公卿(くぎょう)別称
※続日本紀‐天平八年(736)一一月丙戌「臣葛城。幸蒙遭時之恩。濫接九卿之末

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デジタル大辞泉 「九卿」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐けい〔キウ‐〕【九×卿】

古代中国の九つの主要官職名。時代により名称が異なるが、代では、少師・少傅しょうふ・少保・冢宰ちょうさい・司徒・司空・司馬・司寇しこう・宗伯。
公卿くぎょう異称
「重盛いやしくも―に列して三台にのぼる」〈平家・三〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「九卿」の意味・わかりやすい解説

九卿
きゅうけい

中国、丞相(じょうしょう)(宰相(さいしょう))のもとにあって、政務分担執行する諸官庁(九寺(きゅうじ))の長官総称。秦(しん)代に十二あったのが、漢代に九卿九寺に整理され、原則としてこの構成が明(みん)代まで受け継がれた。時代によって九寺の名称と職掌には差異があるが、漢代の九寺は、国家の儀式をつかさどる太常(たいじょう)、宮廷護衛にあたる光禄勲(こうろくくん)、宮門を守護する衛尉(えいい)、皇族をつかさどる宗正(そうせい)、宮中の車馬器物を管理する太僕(たいぼく)、司法機関の廷尉(ていい)、外交を処理する大鴻臚(だいこうろ)、国家財政をつかさどる大司農(だいしのう)、帝室の財務を扱う少府(しょうふ)であり、唐代には太常、光禄、衛尉、宗正、太僕、大理、鴻臚、司農、大府の九寺があった。後漢(ごかん)から六朝(りくちょう)の時代にかけて、尚書の機構が発達し、六部(りくぶ)の行政機関が成立するにつれて、九寺の実権は失われていった。ちなみに唐代では、六部(りくぶ)の長官(尚書)はみな正三品であったのに対し、九卿は、太常卿の正三品を除き、すべて従(じゅ)三品であった。

[尾形 勇]

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改訂新版 世界大百科事典 「九卿」の意味・わかりやすい解説

九卿 (きゅうけい)
jiǔ qīng

中国,秦・漢における三公の下に設けられた中2000石の大臣をいう。太常(祭祀をつかさどる),光禄勲(宮内諸殿の宿衛),衛尉(宮門および禁中の警備),太僕(天子の車馬),廷尉(大理ともいう,刑獄),大鴻臚(接待),宗正(皇族の事務),大司農(国家財政),少府(帝室の私的生活)の正卿を指す。九卿は九寺の長官として清朝までその名が見えるが,魏・晋以後は宮中での上席や高禄をあらわす実権が伴わない称号と化した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「九卿」の意味・わかりやすい解説

九卿
きゅうけい
Jiu-qing; Chiu-ch`ing

中国,秦・漢時代の三公に次ぐ重要な中央官制。秦では奉常 (礼儀や祭葬) ,郎中令 (宮殿関係) ,衛尉 (宮門警備) ,太僕 (たいぼく。車馬関係) ,廷尉 (司法) ,典客 (服属した周辺の民の支配) ,治粟内史 (ちぞくないし。国家財政) ,宗正 (そうせい。皇族の事務) ,少府 (帝室財政) をさし,漢では太常,光禄勲 (こうろくくん) ,衛尉,太僕,廷尉,大鴻臚 (だいこうろ) ,大司農,宗正,少府となっている。周では三公六官と呼び,秦,漢以降でもその名称,職務,権限の変更はあったが,のちまで続いた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「九卿」の解説

九卿(きゅうけい)

九寺(きゅうじ)

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世界大百科事典(旧版)内の九卿の言及

【漢】より


[郡国制と中央集権体制の確立]
 劉邦(高祖)は前202年に皇帝の位につくと,秦の統治方式を踏襲して中央集権的な官僚制と郡県制を施行した。すなわち皇帝の下に行政・軍事・監察の最高責任者として丞相・太尉・御史大夫のいわゆる三公をおき,政務分担機関として太常(儀礼祭祀),光禄勲(宮殿警備),衛尉(宮門警備),太僕(車馬),廷尉(司法),大鴻臚(外交),宗正(宗室),大司農(国家財政),少府(帝室財政)の九卿(きゆうけい)(九寺)をおいて中央政府を構成した。いっぽう地方は大きく郡に分けられ,郡の下には県がおかれた。…

※「九卿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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