乙女峠(読み)オトメトウゲ

デジタル大辞泉 「乙女峠」の意味・読み・例文・類語

おとめ‐とうげ〔をとめたうげ〕【乙女峠】

神奈川・静岡県境にある峠。標高1005メートル。箱根山稜線りょうせんを越える場所で、金時山(標高1213メートル)と丸岳(標高1156メートル)の鞍部あんぶにあたる。箱根越え最古の街道の峠。名は、番所が置かれており御留峠と呼ばれたことから。また、近くに住む孝心の厚い乙女の伝説にちなむともされる。

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精選版 日本国語大辞典 「乙女峠」の意味・読み・例文・類語

おとめ‐とうげ をとめたうげ【乙女峠】

神奈川・静岡両県境、箱根山の外輪山にある峠。箱根・足柄両街道の間の箱根裏街道にあり、小田原藩の番所が置かれて、御留峠と呼ばれた。富士山の眺めが美しい。標高一〇〇五メートル。御厨峠。駿河津峠。

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日本歴史地名大系 「乙女峠」の解説

乙女峠
おとめとうげ

箱根はこね外輪山を越えて御殿場深沢ふかさわと神奈川県足柄下あしがらしも郡箱根町仙石原せんごくはらとを結ぶ峠で、標高は一〇〇五メートル。江戸中期頃に作成された深沢村絵図(小宮山家蔵)には「うとう峠」とある。明暦元年(一六五五)に相模小田原藩主稲葉正則が茱萸沢ぐみざわ村で鷹狩をした時の記録(稲葉氏永代日記)に、「御厨御発駕、二ノ岡通り山路御越、午上刻仙石原御番所に至り御着」とあり、当峠を越えて帰城している。

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改訂新版 世界大百科事典 「乙女峠」の意味・わかりやすい解説

乙女峠 (おとめとうげ)

神奈川県南西部,静岡県との境にあり,箱根外輪山北部を過ぎる峠。標高1005m。大和朝廷時代東国と西国を結んだ官道碓氷(うすい)道が通っていた。現在は乙女峠道路(1984年無料開放)の乙女トンネルが貫通している。峠からの富士山および箱根カルデラの眺めがよい。かつて,この峠は御厨(みくりや)峠,御留(おとめ)峠などと呼ばれた。1619年(元和5)箱根に関所箱根関)が置かれた時,仙石原には番所がおかれ,1626年(寛永3)には仙石原関所となり,箱根裏街道の取調べが行われた。この関所で旅人達はしばしば足止めされたため,この峠を御留峠と呼ぶようになったという。また仙石原に住んでいた親思いの娘が,病に苦しむ父を助けるため,毎夜御殿場竹之下の地蔵尊に祈願の参拝にこの峠を越し,満願となった日,娘は父の身代りとなって,この峠で倒れたという悲話によって乙女峠と呼ばれるようになったという伝説もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「乙女峠」の意味・わかりやすい解説

乙女峠
おとめとうげ

神奈川県南西部、足柄下(あしがらしも)郡箱根町(はこねまち)と静岡県御殿場市(ごてんばし)との境にある峠。標高1005メートル。峠の名は、かつて仙石原(せんごくはら)の孝養深い乙女が、冬の間、父の病気回復祈願のために峠の地蔵に百日参りをし、満願の日の帰途、雪中で凍死した悲話によると伝えられる。箱根火山の嶺線(れいせん)を越える峠で、丸岳(1156メートル)と金時山(きんときざん)(1212メートル)の間の鞍部(あんぶ)にあたる。古東海道の箱根越えの最古道(碓氷(うすい)道)の峠といわれ、富士、箱根の展望や、箱根火山の地学的観察の最適所。明治以後は車道(現、国道138号)が丸岳の南の長尾峠を迂回(うかい)することとなったが、1964年(昭和39)峠下にトンネル(標高810メートル)が開かれて、乙女道路が通じている。ここから稜線(りょうせん)づたいに北方の金時山―足柄峠へのハイキングコースが開ける。御殿場駅、小田原駅からバスが通ずる。

[浅香幸雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「乙女峠」の意味・わかりやすい解説

乙女峠
おとめとうげ

神奈川県箱根町と静岡県御殿場市の境にある峠。箱根山の外輪山西壁を北部で越す峠で,金時山の南西方にある。標高 1005m。箱根越えの最も古い峠で,日本武尊の東征路にあたったといわれる。近世小田原藩が番所をおき,御留峠と呼ばれたことが名称の由来。 1964年国道 138号線の乙女トンネルが完成。西に富士山,南に箱根山を展望。金時山を経て足柄峠にいたるハイキングコースがある。

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