乗込(読み)のりこむ

精選版 日本国語大辞典 「乗込」の意味・読み・例文・類語

のり‐こ・む【乗込】

〘自マ五(四)〙
乗物に乗ったまま中にはいり込む。乗り入れる。
※甲陽軍鑑(17C初)品一五「侍百人許の中へ唯一騎乗(ノリ)こみ」
② 乗物の中へはいり込む。
西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一四「元乗り込みし場所切手にて分りしゆゑ」
③ 大勢の者が乗る。また、一団の者がある場所へ繰り込む。
④ 勢いよくはいり込む。意を決して進み入る。
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)五「只一人南京の城に乗込」
※宝の山(1891)〈川上眉山〉四「思を新にして勇ましく、清華山へ乗込(ノリコ)み給へ」
⑤ 特に役者や興行人の一座が、興行地に繰り込む。
※滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下「下りは夕(ゆふべ)のり込(コ)んだが、明後日あたり出るさうだ」
仲裁にはいる。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後「もやひの舟の解かげん、〈略〉もつれし中へ乗込(ノリコム)も、商売がらの親父役」
気持が大いにその方へ向く。気乗りする。
落語成田小僧(下の巻)(1890)〈三代目三遊亭円遊〉「阿母(おっか)さんは頻りと其話に乗込んで居るが」

のり‐こみ【乗込】

〘名〙
① 乗物に乗り込むこと。また、その人々。
咄本・私可多咄(1671)一「昔、なまくさき出家と、〈略〉しゅんれいと、のりこみの舟に遊女をよび、しゅえんして」
相手方に勢いよくはいりこむこと。特に戦場で、敵の陣容を乱すため、敵中に切り込んでいくこと。〔兵法雄鑑(1645)三六〕
③ 役者や興行人などが、一座を組んで旅先の興行地に繰り込むこと。江戸時代には、東西の役者の上り下りに際して、出勤する劇場へ到着して挨拶をかわす行事。
※談義本・根無草(1763‐69)後「下りの乗込(ノリコミ)一座のさはぎ」
能楽演技の型の名称。右手の扇をあげて前にゆっくりとおろし、前進する足をとめると同時に拍子を踏むこと。

のっ‐こ・む【乗込】

〘自マ五(四)〙 (「のりこむ(乗込)」の変化した語)
雑兵物語(1683頃)下「下積もろくにつまない船に〈略〉めったにのっ込だ程に、傾くと見へたれば」
② 産卵期を迎えた魚、冬ごもりを終えた魚が深い所から浅い所に移動する。

のっ‐こみ【乗込】

〘名〙 産卵期を迎えた魚、冬ごもりを終えた魚が深い所から浅い所に移動すること。《季・春》
生々流転(1939)〈岡本かの子〉「枝川にのっこみの鮒を釣らうと」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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