乗切(読み)のりきる

精選版 日本国語大辞典 「乗切」の意味・読み・例文・類語

のり‐き・る【乗切】

〘自ラ五(四)〙
① 乗ったままで向こうまで行ききる。乗ったままで最後まで行く。船などに乗って越える。
歌舞伎傾城忍術池(1785)四「供に供連れ曳き馬乗り切って歩くやうに、とっくりと思案せい」
② 思い切った行動にでる。
※歌舞伎・謎帯一寸徳兵衛(1811)大切「『喧嘩でもしてひょっと人でも』『ナニ、とんだ事を。身の上はこんなでも、そこは江戸ッ子。乗り切った事は』」
③ 困難などにうちかって、やりとおす。のりこえる。切りぬける。
※鉛の卵(1957)〈安部公房〉六「やっとその時代をのり切ることができたのですね」
④ 航行中の船が他の船に衝突して、船体を突き破る。
※海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉四「一度は胴っ腹を乗り切られ、一度は衝突だった」
⑤ 体にあぶらが十分行きわたる。気力が充実する。
※徳山道助の帰郷(1967)〈柏原兵三〉一「一番油の乗り切っている時だった」

のっ‐き・る【乗切】

〘自ラ五(四)〙 (「のりきる(乗切)」の変化した語)
人情本春色梅児誉美(1832‐33)三「その御用ばかりで乗切(ノッキリ)ますものを。〈略〉渡り越の舟が今じゃア六人でかはりがはりに渡しますぜ」
※雑俳・柳多留‐七(1772)「のっきった御いしゃぢんきょと申あげ」
夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部「このむづかしい時をどう乗っ切るだらうかとも思ひやった」

のり‐きり【乗切】

〘名〙
① 乗りとおすこと。乗ったままであること。のりづめ。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉二「供連の儀も省略して乗切(ノリキリ)登城を許され」
② 昔の戦術一つ。敗退する敵勢の中に馬を乗り入れて分散させ追い討つ方法。〔兵法雄鑑(1645)三六〕
大河などを騎馬、船などで押し渡ること。
腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉一六「三幕目には筋の連絡なく忽然と琵琶湖の乗切をつけて」

のっ‐きり【乗切】

〘名〙 (「のりきり(乗切)」の変化した語) 舟などにのって一気にのりきること。〔書言字考節用集(1717)〕
※滑稽本・指面草(1786)小「馬に騎(のら)ずして猪の牙(き)に乗り、のっきりの身の捻りに妙を得給ひ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「乗切」の解説

乗切
のりきり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治29.9(静岡・若竹座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

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