丹毒(読み)タンドク(英語表記)Erysipelas

デジタル大辞泉 「丹毒」の意味・読み・例文・類語

たん‐どく【丹毒】

皮膚の外傷などから連鎖状球菌が感染して起こる真皮の炎症。顔や手足に多く、境界のはっきりした赤いれができ、熱感や痛みを伴う。ペニシリンが有効。

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精選版 日本国語大辞典 「丹毒」の意味・読み・例文・類語

たん‐どく【丹毒】

〘名〙 皮膚の外傷などから、主に連鎖球菌が感染して起こる急性の炎症。一日ないし数日間の潜伏期を経て高熱を発し、患部の皮膚が発赤して腫れ広がり、灼熱感や痛みを伴う。顔や手足に好発。丹毒瘡。〔病論俗解集(1639)〕 〔東医宝鑑‐雑病・小児・丹毒〕

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六訂版 家庭医学大全科 「丹毒」の解説

丹毒
たんどく
Erysipelas
(皮膚の病気)

どんな病気か

 連鎖球菌の感染によって起こる皮膚の浅いところ(真皮(しんぴ))の化膿性炎症です。皮膚の浅いところに生じた蜂窩織炎(ほうかしきえん)ともいえます。高齢者や免疫力の低下した人に多く発症します。

原因は何か

 化膿連鎖(れんさ)球菌によってよく起こります。菌は皮膚の表面から真皮内に入り炎症反応を生じますが、他の部位から血液を介して菌が真皮に達し生じることもあります。手術のあとや局所のはれ浮腫(ふしゅ))なども誘因として重要です。

症状の現れ方

 突然、高い熱、悪寒(おかん)、全身の倦怠感(けんたいかん)を伴って、皮膚に境のはっきりしたあざやかな赤い色のはれが現れ、急速に周囲に広がります(図51)。表面は皮膚が張って硬く光沢があり、その部分は熱感があって触れると強い痛みがあります。水疱(すいほう)や出血斑を伴うこともあります。

 顔(とくに頬・耳・眼のまわり)、下肢、上肢、手足に多くみられ、近くのリンパ節がはれて痛みがあるのが普通です。

 適切な治療により、1週間前後で表面の皮がはがれてきて治りますが、正しい治療が行われないと、敗血症(はいけつしょう)髄膜炎(ずいまくえん)腎炎などを合併して重篤になることがあります。同じ部位に習慣性に再発を繰り返す場合を習慣性丹毒と呼び、最近増えていますが、慢性のリンパうっ滞が誘因となります。

検査と診断

 血液検査では、白血球が増え、CRP(炎症検査の項目)の上昇、赤沈の亢進がみられます。連鎖球菌に対する抗体ASOASK)が上昇することがあります。蜂窩織炎との区別は必ずしもはっきりしませんが、蜂窩織炎は丹毒より深い部分の皮下脂肪組織での化膿性炎症で、主に黄色ブドウ球菌によって起こります。壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)では、皮下脂肪組織から下の筋膜が病変の場となり、急速に広がって、ショックなど非常に重篤な病状になります。

 そのほか、接触皮膚炎(かぶれ)や虫刺されなどとも区別が必要ですが、それぞれの症状から区別できます。

治療の方法

 主に化膿連鎖球菌が原因ですから、ペニシリン系抗菌薬の内服または注射が第一選択になります。再発予防や腎炎の併発も考えて、よくなってからも約10日間は抗菌薬を内服します。丹毒の部分は安静にして冷湿布をします。

多田 讓治


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改訂新版 世界大百科事典 「丹毒」の意味・わかりやすい解説

丹毒 (たんどく)
erysipelas
Rose[ドイツ]

化膿性連鎖球菌,ときにブドウ球菌,肺炎菌などの感染によって起こる,皮膚または粘膜表層の急性炎症。病原菌はおもに傷口から侵入し,15~60時間の潜伏期を経て発症する。好発部位は,頭部,顔面のほか,下腿や外陰部など外傷を受けやすい部分の皮膚,鼻,口腔内の粘膜などである。突然,悪寒・戦慄を伴った高熱で発症し,同時に皮膚が発赤し腫張する。皮膚の発赤は境界が鮮明な鮮紅色で,灼熱感と圧痛がある。腫張は軽いが,充実性で,ときとしてその表面は水疱を形成したり,かさぶたとなったり,壊疽(えそ)になったりする。抗生物質が発達した今日では,新生児,衰弱者,肝硬変患者などを除くと予後良好であるが,以前は脳膜炎,肺炎,敗血症などを合併して重症となることが多かったため,皮膚病変の特徴的な色合いから丹毒(丹は赤い色の意)と命名され,恐れられた。治療には,サルファ剤,抗生物質による全身療法と,ホウ酸水やリバノールによる局所の湿布が併用される。
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百科事典マイペディア 「丹毒」の意味・わかりやすい解説

丹毒【たんどく】

溶血性連鎖球菌が,皮膚または粘膜移行部の小創より侵入して起こる急性伝染性疾患。局所に境界明瞭な発赤・腫脹(しゅちょう)を生じ,疼痛(とうつう)がある。悪寒(おかん)・戦慄(せんりつ),頭痛,全身違和感などを伴い,顔面,頭部,手足とくに大腿部,陰部,臍(さい),口腔粘膜などに好発する。治療はペニシリン等の抗生物質サルファ剤の投与など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「丹毒」の意味・わかりやすい解説

丹毒
たんどく

化膿(かのう)菌の一つである連鎖球菌が皮膚に感染し真皮内に化膿性炎症をおこした疾患。小外傷、熱傷、湿疹(しっしん)などが細菌の侵入門戸となる。顔と手足に好発し、悪寒、発熱を伴って皮膚に境界のはっきりした発赤と腫(は)れが生じ、触れると硬く、灼熱(しゃくねつ)感と圧痛があり、リンパ節も腫れて痛む。病変は高熱とともに周囲に拡大する。粘膜の侵されたものや小児、高齢者に生じた場合は重症である。治療は、安静にし、抗生物質の全身投与を行い、病変部には湿布を行う。

[野波英一郎]

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家庭医学館 「丹毒」の解説

たんどく【丹毒 Erysipelas】

[どんな病気か]
 蜂巣炎(ほうそうえん)とよく似た病気ですが、病変の場所がもう少し浅く、皮膚と皮下脂肪(ひかしぼう)組織の境界あたりに急速に広がります。赤い病変がまるで「油を流した」ように拡大します。
 拡大するその最前線は線を引いたように明瞭(めいりょう)で、痛み、発熱、頭痛、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)もあります。化膿(かのう)レンサ球菌(きゅうきん)の感染によるものが典型です。
 治療は、安静にして抗生物質(ペニシリン系)を内服します。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「丹毒」の意味・わかりやすい解説

丹毒
たんどく
erysipelas

突然,悪寒発熱を伴って境界鮮明な浮腫性の紅斑が皮膚に発生する疾患。皮膚が発赤することから,この病名がある。病変は周辺部に向って拡大し,ときに皮表に水疱,膿疱,小壊死巣が生じる。蜂窩織炎との区別がむずかしいことが多い。顔面や下肢に好発する。多くは溶血性レンサ球菌感染によるが,黄色ブドウ球菌感染によるものもあるといわれる。ペニシリン系の薬がよく効く。繰返し再発するものは習慣性丹毒という。四肢末梢などに好発し,一般に全身症状は軽微である。

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栄養・生化学辞典 「丹毒」の解説

丹毒

 聖アントニー熱,連鎖球菌性蜂巣織炎ともいう.連鎖球菌による真皮もしくは粘膜固有層に生じる化膿性炎症で,浮腫をともなう.

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普及版 字通 「丹毒」の読み・字形・画数・意味

【丹毒】たんどく

丹毒菌。

字通「丹」の項目を見る

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