中腸腺（読み）ちゅうちょうせん（英語表記）mid-gut gland

精選版 日本国語大辞典

ちゅうちょう‐せん チュウチャウ‥【中腸腺】

〘名〙 節足動物の中腸の前部に開口する塊状または房状の消化腺様の器官。消化酵素を分泌し、こまかく枝分かれした管の細胞によって食物を消化・吸収する。肝膵臓とも呼ばれる。

出典　精選版 日本国語大辞典

デジタル大辞泉

ちゅうちょう‐せん〔チユウチヤウ‐〕【中腸腺】

軟体動物や甲殻類の中腸に付属する消化腺。脊椎動物の肝臓と膵臓すいぞうの機能に相当する意で肝膵臓ともいう。

出典　小学館

改訂新版　世界大百科事典

中腸腺 (ちゅうちょうせん)
mid-gut gland

軟体動物，節足動物の中腸に付随する腺状構造で，暗緑色から暗褐色を呈することが多い。消化酵素を分泌し，胃に送る。動物によって構造，機能ともかなりの差異があり，呼び方もさまざまである。軟体動物では肝臓とよばれ，消化酵素の分泌とともに，腺内，腺細胞内での食物の消化を行うものが多い。カキではグリコーゲンを貯蔵する。カタツムリなど有肺類では，さらに排泄物を貯蔵する細胞やカルシウムを含む細胞がみられる。イカ，タコなど頭足類では，肝臓と膵臓が区別され，消化酵素は胃盲囊に分泌され，ここで食物が消化される。節足動物のうちカニ，エビなど甲殻類では肝膵臓とよばれ，俗に“カニみそ”がこれにあたる。この仲間では中腸腺に4種の細胞が区別され，消化酵素を産生，分泌するほか，栄養分を摂取，消化したり，脂質，グリコーゲンを貯蔵する。昆虫の肝盲囊，フナクイムシ（二枚貝類）やクモの胃盲囊，シャミセンガイ（腕足動物）の中腸憩室も広義の中腸腺と考えられ，消化酵素の分泌，栄養分の吸収，貯蔵を行っている。
執筆者：町田 武生

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

百科事典マイペディア

中腸腺【ちゅうちょうせん】

節足動物および軟体動物の消化器官。軟体動物では肝臓，節足動物の甲殻類では肝膵臓（俗に〈みそ〉と呼ぶ）ともいう。複雑に分岐した多数の盲嚢からなる大きな器官で，黄褐色または暗褐色を呈し，１対の管で中腸に連なる。種によって構造・機能に差があるが，消化酵素を分泌するだけでなく，盲嚢の部分に食物をとり入れ，消化し，さらに吸収も行うことが知られている。

出典　株式会社平凡社

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

中腸腺
ちゅうちょうせん
mid-gud gland

軟体動物，節足動物の中腸に開く消化腺。暗緑色ないし暗褐色を呈する。炭水化物分解酵素を含む消化液を分泌するが，その他養分の吸収，貯蔵に関係するといわれる。脊椎動物の肝臓，膵臓との機能をあわせもつため，肝膵臓ともいう。ザリガニでは3種の細胞から成り，リパーゼ，アミラーゼ，スクラーゼ，マルターゼを分泌する。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

栄養・生化学辞典

中腸腺

　肝膵臓ともいう．軟体類や節足動物の中腸に開口している腺様組織．

出典　朝倉書店