中戸(読み)なかど

精選版 日本国語大辞典 「中戸」の意味・読み・例文・類語

なか‐ど【中戸】

〘名〙
部屋と部屋との間の戸。中の戸。
紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一〇月一六日「母屋(もや)の中とより西に」
商家などの建物で、表口(見世)から店庭を経て中庭にはいる仕切り戸。遊里では、遊女密会場所であった。
※俳諧・独吟一日千句(1675)第九「中戸を明てあたたかになる 筈の違ふ出替り前の下おなこ」
浮世草子好色一代男(1682)七「中戸(ナカド)であふての別れ」

ちゅう‐こ【中戸】

〘名〙
令制で、戸の等級一つ。慶雲三年(七〇六)格では正丁四人いる戸としている。〔令義解(718)〕
中程度資産のある家。中流階級。〔宋史‐高宗紀・七〕
③ (「ちゅうご」とも) 上戸(じょうご)・下戸(げこ)に対して、中くらいの酒飲み。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※酒食論(室町)「酒も小づけも好む中戸也」

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デジタル大辞泉 「中戸」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐こ【中戸】

律令制で、大戸・上戸・中戸・下戸の四等戸の第三。一戸内に正丁せいていが四人または五人いる戸。
《「ちゅうご」とも》中程度の飲酒家上戸下戸に対していう。
「酒も小づけも好む―也」〈酒食論〉

なか‐ど【中戸】

部屋と部屋の間の戸。中の戸。
江戸時代、商家の店から奥に通じる土間の口の仕切り戸。
「―を奥へは、かすかに聞こえける」〈浮・永代蔵・四〉

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普及版 字通 「中戸」の読み・字形・画数・意味

【中戸】ちゆうこ

中流の家。

字通「中」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の中戸の言及

【上戸・下戸】より

…上戸,下戸の語はそれらからの変化と思われる。室町期の《酒飯論(しゆはんろん)》には〈中戸(ちゆうこ)〉という語も見える。この絵巻のことばがきは一条兼良の戯作ともされているが,大上戸の造酒正(みきのかみ)糟屋朝臣長持と,最下戸の飯室律師好飯という僧を登場させて,酒と飯との徳を論じ合わせ,最後に中左衛門大夫仲成なる人物をして〈中戸に過ぎたるものぞなき〉と,酒も飯もともにほどほどに楽しむのが最上だといわせている。…

※「中戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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