ちゅう‐わ【中和】
〘名〙
① (形動) 性格や感情、
性質などが、かたよらないで、正しいこと。
調和のとれていること。程よくおだやかなこと。また、そのようなさま。ちゅうか。
※貴嶺問答(1185‐90頃)「寒甚者噎(むせ)、熱過者爛(くさる)。令二其調適不一レ失二中和一者。勧誘人尤可レ有二用意一事歟」
※わらんべ草(1660)一「楽は中和の徳をやしなひ、
きしつをすくふ道也」 〔礼記‐中
庸〕
② (━する)
酸と
塩基が当量の比で反応して
塩と水を生ずる反応。酸も塩基も水
溶液中では電離しているので、水素イオンと水酸イオンが結合して水を生ずるもの。
※舎密開宗(1837‐47)内「剥篤亜斯
(ポットアス)、〈略〉亜爾鮮
(アルセム)塩も亦
炭酸加里なり。然れども炭酸と熟く中和する者にあらず」
③ (━する) 性質の異なるものが融合して、それぞれの
特性を失うこと。異質の
物質を加えて、ある物質の
効力を弱めること。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋「陸と海と温度も丁度中和の時刻で、
大気は凝って戦
(そよ)との風も動かず」
④ 高周波増幅
回路において、
帰還によって回路が自己発振するのを防ぐこと。
ちゅう‐か ‥クヮ【中和】
※
神皇正統記(1339‐43)上「軽清
(かろくきよき)物は天となり、重濁
(おもくにごれる)物は地となり、中和気
(ちゅうクヮのき)は人となる」
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中和
チュウワ
neutralization
【Ⅰ】一般に,1モル量の酸と1モル量の塩基が反応して,塩および水を生成する現象をいうが,ブレンステッド酸・塩基についていえば,必ずしも塩および水を生成するのではなく,それぞれと共役の塩基および酸を生成する.したがって,次にあげた例のうち,(1)および(2)だけでなく,すべてが中和反応である.
(1) H3O+ + OH- → H2O + H2O
(2) CH3COOH + (Na+)OH- → H2O + (Na+)CH3COO-
(3) HCl + NH3 → NH4+ + Cl-
(4) HCl + (Na+)CH3COO- → CH3COOH + (Na+)Cl-
(5) (NH4+)Cl- + (Na+)OH- → H2O + NH3 + (Na+ Cl-)
【Ⅱ】正の電荷と負の電荷,あるいはこれを保有する物質あるいは反応中間体が,反応あるいは相互作用により,電気的に中性な状態を生じる現象.この場合は電荷の再結合ともいう.たとえば,原子,分子のイオン化で生じた正イオンが,電子あるいは負イオンと反応して,中性の励起状態あるいは安定な化合物を生じる場合などがある.
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デジタル大辞泉
「中和」の意味・読み・例文・類語
ちゅう‐わ【中和】
[名・形動](スル)
1 性格や感情がかたよらないで穏やかであること。また、そのさま。
「一に無偏無党の―ならざるはなし」〈利光鶴松・政党評判記〉
2 性質の異なるものが、互いに融和してそれぞれの性質を失うこと。また、毒などの成分を薄めること。「彼といるとせっかちな私の性格が中和される」
3 酸と塩基とが当量ずつ反応して塩を生じること。「酸とアルカリが中和する」
4 等量の正電荷と負電荷が重なり合って電荷がなくなること。
5 音韻論上の用語。ある音素間の対立的特徴が一定の条件のもとに失われる現象をいう。例えば、ドイツ語の語末においては、tとdなどの無声と有声の対立がなく、無声音しか立たないことなど。
[類語]酸化・塩化・硫化・炭化・還元
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中和
ちゅうわ
neutralization
(1) 酸と塩基とが反応して,水と塩を生じること。広義には水素イオン濃度が中性へ向って変化する過程のこと。中和反応により溶液は普通は中性になるが,必ずしも完全中性になるとはかぎらない。塩酸と水酸化ナトリウムとの中和で,食塩と水を生じる反応は代表的な中和の例である。 S.アレニウスは水溶液中での中和を,H+ と OH- イオン間で H2O を生成する反応と考えて説明した。 J.N.ブレンステッドの酸塩基では水素イオン,G.N.ルイスの酸塩基では電子対の移動として説明される。
(2) 正の電荷と負の電荷が相殺されて,荷電が消失すること。
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中和【ちゅうわ】
(1)酸性の物質と塩基性の物質とが反応して,そのいずれでもないものを生ずること。普通には酸と塩基とが反応して塩を生ずることをいう。水酸化ナトリウムと塩酸とが反応して塩化ナトリウムを生ずる反応など。 NaOH+HCl→NaCl+H2O(2)電気的には正および負の電荷が打ち消しあって外部に電荷の影響が現れなくなる現象をいう。(3)細菌・ウイルス・毒素などに抗体が結合して,それらの働きを抑えること。
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中和
酸から生じるH+と塩基から生じるOH−が反応して水になり,酸,塩基の性質を示さなくなる現象.
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ちゅうわ【中和 neutralization】
性質の異なるものをいっしょにすることにより,それぞれの特性を失わせたり,あるいはその効力を弱めることを一般に中和という。等量の正および負の電荷がいっしょになれば,外部には電荷の影響がまったく現れなくなる。これを正負の電気が中和したという。また,病原体の出す毒素や,マムシなど動物の毒を適当な抗血清を用いて無害化するのも中和である。化学においては,狭義には,水溶液中の酸と塩基が当量反応して,塩と水を生ずるのが中和である。
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普及版 字通
「中和」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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世界大百科事典内の中和の言及
【音韻論】より
…/spin/〈つむぐ〉に対し*/sbin/(*は措定形であることを示す)という対立はないので,/s/音の後では/p/と/b/はこえの対立をなさない。これを中和neutralizationと称する。さらにR.ヤコブソンは弁別的素性を調音的でなく音響的特徴により記述しようと試みた。…
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