中京都構想(読み)ちゅうきょうとこうそう

知恵蔵 「中京都構想」の解説

中京都構想

大村秀章愛知県知事が2011年に知事選出馬に際して提唱した、愛知県と名古屋市を一体化した自治体として運営しようという構想。同氏が会長を務める地域政党「日本一愛知の会」のマニフェストによれば、愛知県と名古屋市を合体して「中京都」を創設。都市のエリアを愛知県全体に広げて、人口740万人、域内総生産(GDP)40兆円(目標)の「都」となり、「日本の顔」として世界と闘える基盤を築くものだという。また、愛知県と名古屋市の政策・企画立案部門を合体・一本化した「司令塔」をつくり、重複行政を排して「強い大都市、アイチ・ナゴヤ」を創建、道州制を見据えた「中部広域連合」を設立、国税徴収を行い国からの請求に応じて支払いを分担する仕組みによって、国への依存から、国からの自立に転換するとしている。
ただし、大阪市などを解体して東京23区のような特別区に再編するという、「大阪維新の会」代表である橋下徹大阪市長らの唱える「大阪都」とは異なり、11年の知事選出馬の時点で、中京都構想は具体像が示されずイメージのみが突出したものだった。実現の過程や行政の構造などが明示されていなかったため、当初は「減税日本」の代表を務める河村たかし名古屋市長も、中京都構想に組み込まれるものとして「尾張名古屋共和国」構想を掲げ協調姿勢をとっていた。
しかし、12年には、財界や学識経験者などによる中京都構想のブレーン組織「中京独立戦略本部」の会合がスタート。具体的方向が模索されてゆくにつれて県と市の構想の違いも鮮明化してきている。近隣自治体を含め人口400万人規模の都市をつくり、その機能を強化して特別自治市をつくるという河村市長の「尾張名古屋共和国」構想に対して、大村知事の構想は知事と市長の兼務を可能とする制度改正により名古屋市を解体して愛知県そのものを「中京都」とするというもの。
また、これらとは別に、同年2月16日「みんなの党」(渡辺喜美代表)が次期衆院選を巡る愛知県向けの「ローカルアジェンダ(公約)」として発表した、名古屋市を解体して7つの特別区に再編するという「大阪都」に似た形の構想もある。構想それぞれの違いはあるが、府県と市の重複行政が実際には多くないので歳費削減に資するか疑問であることや、地方公共団体の巨大化は地方自治本旨にそぐわないなどの指摘もある。

(金谷俊秀  ライター / 2012年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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