中ロ合同軍事演習(読み)ちゅうろごうどうぐんじえんしゅう

知恵蔵 「中ロ合同軍事演習」の解説

中ロ合同軍事演習

ロシアと中国は2005年8月18日から8日間、初めての合同軍事演習「平和の使命2005」を行った。上海協力機構の枠内で実施されたこの演習は、アジア太平洋地域での両国の軍事的なプレゼンスと協力関係を誇示するもので、ロシアはアジアでの存在感を高めて米国の一極支配を牽制し、中国は台湾有事の際の米軍や日本の動きを牽制することを主たる目的にしている。合同演習の内容は(1)共同作戦の策定、(2)兵力の輸送と展開、(3)作戦遂行からなる。第1段階ではウラジオストクで図上演習、第2段階、第3段階では山東半島での上陸作戦、空挺部隊降下訓練、海上封鎖空中給油ミサイルの訓練を実施した。この合同演習は中国の主導によるもので、台湾問題を重視する中国は当初、演習地として台湾に近い浙江省を提案したが、政治的色彩が強すぎることにロシアが難色を示し、結局台湾に見立てた山東半島や周辺海域で「民族対立の激化に中ロが国連の要請で介入」というシナリオの演習となった。陸、海、空一体の大規模な演習も、中国の提案によるものだ。航空機約100機、艦艇約70隻、兵員は中国から約8200人、ロシアから約1200人が投入された。イワノフ国防相はこの演習により両国の戦略的な関係は質的に新しい段階にはいったと強調した。ただ、ロシアが将来中国の軍事作戦に参加するわけではないとも述べた。2007年8月には、ロシアのチェリャビンスクで合同軍事演習「平和の使命2007」が実施された。

(袴田茂樹 青山学院大学教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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