世界観
せかいかん
world view 英語
vision du monde フランス語
Weltanschauung ドイツ語
一般的には、ある統一的観点からする世界の全体把握をいう。世界観といえば、世界の外側にたって、これを対象的に眺め、理解することのように思われるかもしれないが、そうではない。真の意味における世界の包括的理解を志すならば、そのようにみている自分自身の主体的なあり方を含めて問題にせざるをえない。どれほど超越的な視点から世界をみている者でも、彼自身世界を構成する一部分であることにかわりはないからである。世界観を形成する人間もまた現実の世界の動きに巻き込まれて存在するのであり、彼はつくることによって世界をみ、逆にまた世界をみることによってつくってゆく。歴史的現実のなかから世界観は生まれるが、世界観はまた歴史をつくりかえてゆくものである。この意味において、世界観における主体的・実践的契機がしばしば強調されることになる。
科学と世界観の対立ということも、同じ観点から問題にすることができる。科学は事象相互の関係を観察し、法則的に記述するだけで、そのような仕方で世界をみている人間の主体的現実を顧慮しない。科学は観測可能な現象の客観的記述ばかりに終始するため、世界を統一的に把握し、解釈することができない。このために科学は世界「像」を与えることはあっても、世界「観」に達することはけっしてない。これに反し、世界観は単なる客観的対象理解に満足せず、みる主体の実践的把握にまで進んでいく。つまり、世界観は人生観と深く関連しているといえるだろう。
ディルタイは、世界観の形成される根源にそれぞれの生経験があると考え、世界観の類型を宗教、詩、形而上(けいじじょう)学に大別し、さらに形而上学的世界観を、(1)自然主義、(2)自由の観念論、(3)客観的観念論、に分類している。また、シェラーが、(1)ユダヤ・キリスト教的、(2)ギリシア的、(3)自然科学的、の三つの型を区別し、ニーチェがアポロン的とディオニソス的の二類型を考えたことはよく知られている。マルキストは階級的見地からみてブルジョア的とプロレタリア的、哲学的世界観としては観念論と唯物論という対立をたてる。いずれにせよ、人がいかなる世界観を選ぶかは単なる理論的態度だけで決まることではなく、彼がいかなる歴史的状況のなかから、いかなる実践的方向づけのもとにおいて思索し、決断し、行為するかということと深く関係しているというべきだろう。
[伊藤勝彦]
『ディルタイ著、山本英一訳『世界観の研究』(岩波文庫)』
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世界観
せかいかん
Weltanschauung
形而上学的観点からの世界についての統一的把握をいい,知的側面ばかりではなく実践的,情緒的側面をも含めた包括的世界把握を目指す。世界観は広く人生観と関連し,哲学ばかりではなく,神話,宗教,文学,美術など芸術の領域にも見出される。世界観学の先駆形態としてはライプニッツのモナドロジー (→単子論 ) があげられるが,ドイツ語の「世界観」という言葉が学問的用語として頻繁に用いられるようになったのは 20世紀初めにおいてである。ゴンペルツ (『世界観学』 Weltanschauungslehre〈1905~08〉) やオイケンを経て,ヤスパースでは,精神病理学から出発し了解心理学を経て実存主義哲学にいたる彼の思索展開において世界観の心理学 (『世界観の心理学』 Psychologie der Weltanschauungen〈19〉) が試みられ,ディルタイでは,哲学的世界観として自然主義,自由の観念論,客観的観念論の3類型があげられた。フッサールも世界観を理念として認めているが,しかし時代とともに変遷するとしている。そのほか,哲学,心理学,社会学,民族学,各個別芸術学において世界観の諸類型が析出されており,その数は多い。
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世界観【せかいかん】
18世紀以来のドイツ語Weltanschauungの訳で,世界全体の統一的な把握をいう。その場合,〈世界像Weltbild〉のように単に世界の客観的・知的な見方であるだけでなく,より直接的な主体的評価を含む。すなわち,世界に〈姿〉とともに〈意味〉を見出すところに世界観成立の契機があって,意味は歴史と文化の文脈に応じて多様であるから,世界観もまた同様である。
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デジタル大辞泉
「世界観」の意味・読み・例文・類語
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せかい‐かん ‥クヮン【世界観】
〘名〙 世界を一つの統一体と見て、その意義や価値に関する考え方。人生観と関連しあう。楽天主義・厭世主義・宿命論・宗教的世界観・道徳的世界観・科学的世界観などの立場がある。
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一四「先生の世界観(セカイクヮン)が瞬(またたき)と共に変る様に明るくなる」
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せかいかん【世界観 Weltanschauung[ドイツ]】
世界全体をどのようなものとして見るかという人間の基本的態度をいう。もとドイツ語の訳で,18世紀に最初にこの語が用いられたときには,〈世界の感性的直観〉というだけの意味であったが,19世紀を通じキリスト教の衰退期に,これに代わる世界像や生き方を包括した意味での用法が確立された。
【世界観の概念】
[形成]
世界観は伝統や教育や流行によっても影響されるが,基本的には生活にその基礎を置いている。人間は世界の内に生活しているから,周囲の世界の事物や他人と交渉を持ち,それらから作用を受けたり逆にそれらに働きかけて生きている。
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世界大百科事典内の世界観の言及
【数】より
…理由は,(2),(3)が成り立てば,〈x≠0⇒x2>0〉が得られるのに,虚数単位iをとればi2=-1<0となるからである。数学【永田 雅宜】
【数と世界観】
数の概念は自然数の発見以後,それぞれの文化的環境のもとにいろいろに発展してきた。ここでは,その一つである世界観と関連した分野について述べることにする。…
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