世界(雑誌)(読み)せかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界(雑誌)」の意味・わかりやすい解説

世界(雑誌)
せかい

岩波書店が1946年(昭和21)1月に創刊した総合雑誌。当初、武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)、志賀直哉(なおや)、安倍能成(あべよししげ)らの同心会が編集に参与したが、のちに独立。初代編集長は吉野源三郎(げんざぶろう)。1951年の対日講和条約では全面講和主張、1960年の安保改定時、改定に反対して請願権行使を訴え、広く市民に影響を与えた例にみられるように、知識人を組織し、憲法擁護の立場で、精力的に言論活動を展開している。金大中(きんだいちゅう)事件の起こった1973年8月に発売された同誌9月号には金大中が寄稿していることからもわかるように、韓国問題にいち早く関心を示し、T・K生(本名は宗教哲学者の池明観(ちめいかん/チミョングァン)。1924―2022)の『韓国からの通信』は同年5月号より連載され、1988年3月号まで続いた。情報を広く世界に求め、平和と民主主義基調にするという雑誌の基本的な性格は1970年代以後も堅持され、日韓関係の改善、冷戦克服、1990年代にはソ連邦解体後のポスト冷戦の時代に国際社会のなかで日本はいかに生きるべきか、また教育問題などにも持続的に問題提起している。2001年(平成13)、歴史教科書問題による日本とアジア諸国間の摩擦に際しては、別冊『歴史教科書問題 未来への回答』(2001年12月号)で東アジア共通の歴史観の可能性を特集している。また、創刊当初より文学方面でも、志賀直哉、太宰治(だざいおさむ)、野上弥生子(やえこ)、川端康成(やすなり)、安部公房(こうぼう)、伊藤整(せい)、大江健三郎、吉村昭(あきら)らが話題作を執筆している。

[京谷秀夫・田中夏美]

『『世界』主要論文選編集委員会編『「世界」主要論文選1946―1995 戦後50年の現実と日本の選択』(1995・岩波書店)』『『世界 総目次1946―1995』(別冊『世界』、1996)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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