丑の時参り(読み)ウシノトキマイリ

デジタル大辞泉 「丑の時参り」の意味・読み・例文・類語

うしのとき‐まいり〔‐まゐり〕【×丑の時参り】

丑の時(今の午前2時ごろ)に、神社に参り、境内樹木に憎い人物に擬したわら人形を釘で打ちつけ、相手の死を祈るのろい事。白衣で、頭上鉄輪かなわにろうそくをともし、胸には鏡を下げ、顔やからだを赤く塗るなどして行う。7日目の満願の夜に願いがかなうと信じられていた。丑の刻参り。丑の時もうで。

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改訂新版 世界大百科事典 「丑の時参り」の意味・わかりやすい解説

丑の時参り (うしのときまいり)

恨む相手をのろい殺すため丑の刻(午前2時ごろ)に社寺に参詣し,神木などに藁人形五寸釘を打ちつけて祈願することを7日間つづけ,願いがかなうと相手が死ぬという信仰。頭に五徳を逆さにかぶり,その足にろうそくを立て,白装束を着て,人知れずこれを行うものとされた。とくに貴船の神はのろいをかなえてくれる神として有名であった。このような仕方ののろいは,中世の《平家物語》〈剣の巻〉や謡曲鉄輪(かなわ)》などにみえている。江戸時代に多く行われた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「丑の時参り」の意味・わかりやすい解説

丑の時参り
うしのときまいり

人を呪(のろ)うための呪術(じゅじゅつ)の一方法。白衣を身にまとい、ろうそくを鉄輪(かなわ)で頭につけ、丑三つの刻(こく)(午前2時半ごろ)に、社寺などの樹木に呪うべき相手の人形(ひとがた)を取り付け、人に見られないように五寸釘(くぎ)を打ち込んでくる。頭に釘を打つと相手の頭が痛み、手足に打つと手足を病むという。広い意味の類感呪術、手段別では代用呪術に含まれる。人に見られると効果がなくなるという。謡曲の『鉄輪(かなわ)』をはじめ、近世怪談などにこれを話題にしたものが多い。

[井之口章次]

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百科事典マイペディア 「丑の時参り」の意味・わかりやすい解説

丑の時参り【うしのときまいり】

他人をのろい殺す呪(まじない)。深夜丑の刻(2時ころ)神社に参り人をかたどった藁人形に釘を打ち込む。普通,女が口に櫛(くし)をくわえ鉢巻に蝋燭を結わえつけた姿で描かれる。他人に見られると効果がないとされた。室町時代までは必ずしものろいでなく,広く願掛けを目的とした。
→関連項目不能犯

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「丑の時参り」の意味・わかりやすい解説

丑の時参り
うしのときまいり

民俗的な呪的行為の一種。丑の刻 (午前2時頃) に神社に参って祈願することであるが,もっぱら女が特定の人を呪い殺そうとして毎夜神社に参ることをいう。神社境内の樹木にわら人形を掛け,それに釘を打ちつける。白衣を着,ろうそくを鉄輪につけたものを頭に戴いて胸に鏡をつける。楊州周延の錦絵などをみると高下駄をはき,口に灯火をくわえ,手に刀を持っている。7日目の満願の日に願いがかなうという。

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世界大百科事典(旧版)内の丑の時参りの言及

【のろい(呪)】より

…のろいのしかたにはいろいろあったようであるが,古代から現代まで人々にもっとも好まれた方法は,相手に見たてた人形(にんぎよう)(形代(かたしろ))や相手の所持品,髪や爪など身体の一部を責めるというものであった。近世には著名な寺社に特別な衣装をつけて〈丑の時参り〉をすれば,その神仏がのろいの願いを聞き届けてくれるという信仰が広く流布したが,この丑の時参りにものろい人形が用いられた。平安時代以降には調伏法を伝える密教系の僧や呪禁(じゆごん)・陰陽道系の宗教者たちに依頼してのろってもらう方法も社会の各層に浸透した。…

【不能犯】より

…このように,結果を発生させることがそもそも不可能であるために未遂犯さえ構成せず罰せられない行為を不能犯(または不能未遂)という。例えば,人の毒殺をはかったところ,使用した毒物の量が致死量に達していなかったために,相手を殺害するに至らなかったという場合には,殺人未遂が成立するが,相手をのろい殺そうとして行う丑(うし)の時参りによっては人を殺すことはできないから,この場合は不能犯であり,犯罪(未遂)は成立しない。 丑の時参りのような迷信犯が不能犯であり,犯罪を構成しないことは明らかであるが,不可罰な不能犯と可罰的な未遂犯の限界をどのように画するかは争われている。…

※「丑の時参り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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