不輸租田(読み)ふゆそでん

精選版 日本国語大辞典 「不輸租田」の意味・読み・例文・類語

ふゆそ‐でん【不輸租田】

〘名〙 令制で、田租国家に納めていない田地耕作者は田租に相当する米穀を上納するが、それは特定の公的な目的に使われる。神田寺田公廨田勅旨田などの類。
正倉院文書‐天平七年(735)相摸国封戸租交易帳「不輸租田壱仟弐伯肆拾肆町参段壱伯陸拾壱歩」

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デジタル大辞泉 「不輸租田」の意味・読み・例文・類語

ふゆそ‐でん【不輸租田】

律令制で、田租を免除された田。寺田神田職田しきでんなど。→輸租田

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不輸租田」の意味・わかりやすい解説

不輸租田
ふゆそでん

律令制時代,国家に納入すべき田租を免除された田地のこと。寺田神田職田などがこれにあたり,やがて位田功田なども不輸租化した。平安時代に入り,荘園の成長に伴ってまず寺社領荘園,次いで一般貴族の荘園がこの特権を獲得するにいたった。すなわち荘園領主は田租の徴収権を国家から委譲されたこととなり,この特権は日本の荘園の特徴の一つといえる (中国,唐の荘園は不輸租ではない) 。 (→不輸・不入 )  

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「不輸租田」の解説

不輸租田
ふゆそでん

律令制下,田租の国衙への納入を免除された田。その田種には多少の変遷があるが,職(分)田・在外諸司職(分)田(国司公廨(くげ)田)・神田・寺田・駅田・官田・戒本師(かいほんし)田・放生(ほうじょう)田・勅旨田・射(しゃ)田・御巫(みかんなぎ)田・采女(うねめ)田・健児(こんでい)田・学校田・諸衛射田・左右馬寮田・飼戸田・賙急(しゅうきゅう)田・勧学田・典薬寮田・節婦田・職写田・膂力婦女(りょりょくふじょ)田・惸独(けいどく)田・船瀬功徳田・造船瀬料田・官戸奴婢口分田などがあげられる。これらの田種の穫稲は,広い意味での国家の特定の用途に供せられる。不輸租といっても,耕作者である農民から徴せられた田租が国衙の一般財政にくみこまれないという意味にすぎず,穫稲が国家的使途に直接利用される点で,結果的には輸租田とかわらない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不輸租田」の意味・わかりやすい解説

不輸租田
ふゆそでん

律令(りつりょう)制下で田租を免除し、その分を給主の得分とされた水田。耕作農民が免租されたわけではない。輸租田に対する。官田、神田、寺田などが属する。田租のかわりに地子(じし)を納める輸地子田を含めることもある。

[竹内理三]

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旺文社日本史事典 三訂版 「不輸租田」の解説

不輸租田
ふゆそでん

律令制において田租を免除された田
神田・寺田・職田・勅旨田・国司の公廨田 (くがいでん) などがこれにあたり,寺社の用途料や官人の俸禄の一部とされた。のちには本来輸租田である位田・功田・墾田なども不輸租田となり,荘園が,これをもとにしだいに成立した。

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改訂新版 世界大百科事典 「不輸租田」の意味・わかりやすい解説

不輸租田 (ふゆそでん)

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百科事典マイペディア 「不輸租田」の意味・わかりやすい解説

不輸租田【ふゆそでん】

輸租田

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世界大百科事典(旧版)内の不輸租田の言及

【公田】より

…【池田 温】
[日本]
 古代・中世を通じて長く用いられた語であるが,時代によって語義を異にする。古代の法律用語としての公田は原則として不輸租田であり,輸租田である私田と区別された。不輸租田である公田には,官田,神田,寺田,駅田,射田,諸衛射田,健児田,采女田,節婦田,膂力婦田,御巫田,布薩戒本田,放生田,学校田,勧学田,典薬寮田,飼戸田,職写戸田,官戸奴婢口分田,救急田,惸独田,船瀬功徳田,造船瀬料田,勅旨田が含まれる。…

【輸租田】より

…国衙では永年の備蓄にあてがわれた。律令制時代の田地は,田租を納める輸租田と,納めない不輸租田,そして地子を納める輸地子田(乗田,無主田,収公田など)の3種類に区分できる。輸租田,不輸租田の区別は時期によって少し異なるが,口分田位田功田賜田,郡司職田,国造田と墾田が輸租田,職田公廨(くがい)田,駅田(駅起田),官田(屯田)と寺田神田(大宝令の注釈書の古記は輸租田とするが,田租は本主の寺社に納める)が不輸租田である。…

※「不輸租田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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