不老不死
ふろうふし
人間とは別な世界に住む、人間界を超越した者の特性として考えられる、若さの永続と生命の永遠をいう。これを願うことは人類に普遍的であり、神(かみ)の国(くに)、浄土(じょうど)世界、天国(てんごく)など、宗教や信仰によって相違はあるが、別な世界を表している。中国では、『史記』に秦(しん)の始皇帝(しこうてい)(前259―前210)が不死の薬を求めた話があり、戦国時代から不死の観念があったと思われる。道家(どうか)の養生(ようせい)の説には不老長寿を実現するための方法が述べられ、六朝(りくちょう)時代になると、葛洪(かっこう)によって、服薬(ふくやく)、辟穀(へきこく)、導引(どういん)など不老不死を得るための具体的方法が説かれ、不老不死は道教の重要な思想的要素となった。その方法が現代において健康法に活用されているものもある。また不老不死を主題にした文学作品も数多くある。
[今枝二郎 2018年5月21日]
『『神僊思想の研究』(『津田左右吉全集10 日本文芸の研究』所収・1964・岩波書店)』
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不老不死
ふろうふし
bu-lao bu-si
これは人類の普遍的願望であるが,霊魂の不滅を唱えたキリスト教に対し,中国人はこの世での生命体の不死を問題とした。そこから俗世を超越した仙人 (神仙) の像が描出され,仙人になるために各種の修行法が案出された。その方法には大別して,(1) 特殊な呼吸法や体操によって肉体を鍛える,(2) 仙薬 (丹) を服する,の2方法があった。 (2) の方法は,節制や鍛練などの修業を実行できない王侯貴族が愛用した。唐の太宗 (2代) ,高宗 (3代) ,敬宗 (13代) ,武宗 (15代) らは金や水銀,ヒ素などからつくった丹薬を用いて中毒死したという。しかし,不老不死の追求は化学や宗教を発達させ,種々の養生法や漢方薬の発想や技術の発展を促した。
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不老不死
いつまでも年をとらず、また死なないこと。
[使用例] ついてはかねがね御約束の通り、今日は一つ私にも、不老不死になる仙人の術を教えてもらいたいと思いますが[芥川龍之介*仙人|1922]
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ふろう‐ふし フラウ‥【不老不死】
※
梁塵秘抄(1179頃)二「法華経なりとぞ説いたまふ、ふらうふしの薬王は」 〔列子‐湯問〕
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デジタル大辞泉
「不老不死」の意味・読み・例文・類語
ふろう‐ふし〔フラウ‐〕【不老不死】
いつまでも年をとらず、また、死なないこと。中国人の伝統的生命観の一つ。「不老不死の仙薬」
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ふろうふし【不老不死】
長生つまり肉体の永存をいう。いつまでも若く永遠に生きたいという人間の根源的な願望は,中国では神仙道教の教義に結実した。古代的不老不死の観念を,(1)若さを保ったまま永生を得る,(2)いったん死んでからよみがえる,という二つの型に分けるとすれば,処女のような肌をした藐姑射(はこや)の仙人や白日昇天(ある日突然身体が軽くなって昇仙する)などは前者であり,尸解(しかい)(みせかけの死のあと棺中に剣や杖を残して仙人の仲間入りをする)などは後者に属する。
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