不換紙幣(読み)フカンシヘイ

デジタル大辞泉 「不換紙幣」の意味・読み・例文・類語

ふかん‐しへい〔フクワン‐〕【不換紙幣】

正貨と引き換える保証のない紙幣。⇔兌換だかん紙幣

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精選版 日本国語大辞典 「不換紙幣」の意味・読み・例文・類語

ふかん‐しへい フクヮン‥【不換紙幣】

〘名〙 発行者である政府または銀行が、正貨との兌換(だかん)義務を負わない紙幣。⇔兌換紙幣。〔改正増補和英語林集成(1886)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「不換紙幣」の意味・わかりやすい解説

不換紙幣 (ふかんしへい)

本位貨幣(または正貨)との兌換(だかん)が保証されていない紙幣(正確には政府紙幣)のことである。しかし現在政府紙幣は発行されておらず,いわゆる紙幣はすべてが日本銀行券である。1931年12月金輸出再禁止と同時に銀行券の金貨兌換が停止され,日本銀行券は兌換銀行券から不換銀行券となり,現在に至っている。そのため不換紙幣と不換銀行券の用語の区分があいまいになり,一般に日本銀行券のことを不換紙幣と呼んでいる。本来,財政上の理由から発行される政府紙幣と,中央銀行の信用供与の見合いに発行される銀行券とは,厳密には区分しなければならない。しかし第2次大戦中日銀引受けによって巨額の国債が発行され,これが銀行券の増発,ひいてはインフレーションの発生を招くことになった。この場合,日銀勘定では銀行券が国債引受けを見合いに無制限に発行されて,実質的に不換紙幣と変わらない結果となった。現在,銀行券は正貨という実体価値の裏付けのない紙券であるが,通貨としての機能を果たしているのは,それが国民の信認によって支えられているからである。今後とも銀行券がこうした国民の信認を確実に得るには,それが実質的な意味での不換紙幣とならないように,日銀当局は金融政策を適切に運営して,国内物価,円相場を安定させ,内外にわたる円の通貨価値維持をはかることが肝要である。
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百科事典マイペディア 「不換紙幣」の意味・わかりやすい解説

不換紙幣【ふかんしへい】

正貨と兌換(だかん)されない政府紙幣および銀行券。政府紙幣は,一般に正貨の裏付けがなく強制通用力によってのみ流通する紙幣であるから不換紙幣であり,兌換が停止された銀行券もまた政府紙幣と同じ流通法則に従う。→兌換券
→関連項目管理通貨制度国立銀行紙幣太政官札

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不換紙幣」の意味・わかりやすい解説

不換紙幣
ふかんしへい
inconvertible paper money 英語
uneinlösbares Papiergeld ドイツ語

本位貨幣あるいは正貨との兌換(だかん)が保証されていない紙幣。おもに政府紙幣をさすが、今日の日本銀行券のように不換化された中央銀行券も含めてよぶ場合もある。政府による紙幣の発行は、補助貨幣欠乏を補うために小額紙幣として行われる場合もあるが、対外戦争や内戦の際に財政赤字を補うために発行されることも少なくなく、このような場合には、しばしば激しいインフレーションを引き起こすことになった。

[齊藤 正]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不換紙幣」の意味・わかりやすい解説

不換紙幣
ふかんしへい
inconvertible paper money

正貨 (金,銀などの本位貨幣) に兌換されない紙幣。金本位制時代には銀行券は当然兌換紙幣であったが,戦争,内乱などの異常事態のとき政府が発行する紙幣は,多くの場合不換紙幣であるか,当初は兌換紙幣であっても,のちに不換紙幣となることが多かった。古くはフランス革命時のアッシニア紙幣,近くは第1次世界大戦のドイツマルク紙幣などがその典型である。しかし金本位制から離脱した現代の国際通貨体制のもとでは,どの国にも兌換紙幣は存在しなくなっている (→兌換券 ) 。

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旺文社日本史事典 三訂版 「不換紙幣」の解説

不換紙幣
ふかんしへい

正貨と兌換 (だかん) する保証がされていない紙幣
明治初年の太政官札も国立銀行券も兌換券として発行されたが,信用不足や制度改正で不換紙幣となりインフレを激化させた。1882年以来日本銀行だけが兌換銀行券の発行権を与えられ,不換紙幣は徐々に整理された。現在の紙幣は,1942年施行の日本銀行法により管理通貨制度が採用され不換紙幣となっている。

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