不思議(読み)ふしぎ

精選版 日本国語大辞典 「不思議」の意味・読み・例文・類語

ふ‐しぎ【不思議】

〘名〙 (形動)(「ふかしぎ(不可思議)」の略)
[一]
仏語。思いはかることもことばで言い表わすこともできないこと。また、そのさま。
※霊異記(810‐824)中「三宝の非色非心、目に見え不(ず)と雖も、威力无きに非ぬことを。此れ不思議の第一なり」 〔六十華厳経‐三〕
人間の思考力、判断力の及ばないこと。また、そのさま。
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「『子いできなばとらせん』といひしを、さにこそありけれ。ふしぎなる事かな」
③ 思いもかけないこと。また、そのさま。予想外。
※平松家本平家(13C前)九「若(もし)不思議に只今を忍び過ぐとも」
[二] 常識的、理性的な思慮の及ばないこと。また、そのさま。
① 倫理的に非常識なこと。あるまじきこと。けしからぬこと。また、そのさま。
大鏡(12C前)四「この帥殿は花山院あらがひごと申させ給へりしはとよ。いとふしぎなりしことぞかし」
② 普通でなく、粗末なこと。卑しいこと。また、そのさま。
※中華若木詩抄(1520頃)下「不思儀なる小巷へ、高人の御来臨」
③ (━する) あやしいこと。疑惑を感じること。また、そのさま。不審。→不思議を立てる
仮名草子・恨の介(1609‐17頃)下「朧に見ゆる御風情、ふしぎに思ひける所に」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「不思議」の意味・読み・例文・類語

ふ‐しぎ【不思議】

[名・形動]《「不可思議」の略》
どうしてなのか、普通では考えも想像もできないこと。説明のつかないこと。また、そのさま。「不思議出来事」「成功不思議でない」
仏語。人間の認識理解を越えていること。人知の遠く及ばないこと。
非常識なこと。とっぴなこと。また、そのさま。
「花山院とあらがひごと申させ給へりしはとよ。いと―なりしことぞかし」〈大鏡道隆
怪しいこと。不審に思うこと。また、そのさま。
「明くればうるはしき女﨟に―を立て、いかなる御方ぞ、と尋ね給ふに」〈浮・五人女・三〉
[派生]ふしぎがる[動ラ五]ふしぎさ[名]
[類語](1不可思議不可解不審奇妙面妖めんようみょうへんなぞかい奇異奇怪幻怪怪奇怪異神秘霊妙霊異玄妙あやかしミステリーミステリアス奇天烈摩訶不思議けったいおかしい異常異様不自然奇態風変わり特異異状異例非常別条変ちくりん変てこ変てこりん妙ちきりんおかしな珍奇新奇珍妙奇抜奇警奇想天外突飛ファンシー突拍子もない言語道断無茶めちゃむちゃくちゃめちゃくちゃめちゃめちゃ滅法法外無理乱暴無体理不尽非理不当不条理不合理非合理狂的

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の不思議の言及

【七不思議】より

…〈不思議〉は元来,仏教語〈不可思議〉の略で,思議すべからざること,つまり心で思うことも,言葉でいうこともできないようなことを指し,経典には4種,5種,10種などの不可思議がみえている。日本では〈七不思議〉という言葉は,古く嘉禎4年(1238)の奥書をもつ《諏方上社物忌令之事》に,信州諏訪大社の神威を表すものとして用いられている。…

※「不思議」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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