下田光造(読み)しもだみつぞう

改訂新版 世界大百科事典 「下田光造」の意味・わかりやすい解説

下田光造 (しもだみつぞう)
生没年:1885-1978(明治18-昭和53)

精神医学者。1911年東京大学医学部卒業後,呉秀三のもとで臨床精神医学,脳病理学を専攻。21年慶応大学精神科初代教授。ドイツ留学後,25年九州大学精神科教授。定年退官後は米子医科大学長,鳥取大学長を歴任し,米子名誉市民となる。てんかん統合失調症,症状精神病などの脳病理学を研究。躁うつ病の病前性格を執着性格名付け,これに定義を与えたうえで提唱された躁うつ病の発病病理説は国際的評価を得ている。その治療法として創始されたスルフォナール持続睡眠療法は当時としては優れた療法であった。また森田療法当初から理解評価してその治療経験を重ね,本療法の発展に貢献した。
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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「下田光造」の解説

下田光造 しもだ-みつぞう

1885-1978 明治-昭和時代の精神医学者。
明治18年3月14日生まれ。慶大教授をへて,大正14年九州帝大教授となる。米子医専の創立につくし,昭和20年同校初代校長,後身の米子医大の学長,鳥取大学長をつとめる。てんかんの病理,精神病の身体的療法などを研究。躁鬱(そううつ)病の病前性格を執着気質と定義づけた。昭和53年8月25日死去。93歳。鳥取県出身。東京帝大卒。著作に「最新精神病学」(共著)。

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世界大百科事典(旧版)内の下田光造の言及

【持続睡眠療法】より

…ウォルフO.Wolff(1901)がトリオナールを用いたことに始まるが,さらにクレージJ.Kläsi(1921)がソムニフェンを使用して早発性痴呆や錯乱状態の患者を治療したことで精神病に対する一つの治療手段となった。日本でも下田光造(1922)によって躁鬱(そううつ)病患者の治療にスルホナールが用いられ,これが盛んに行われた時期がある。治療期間は10~20日前後で,主として鬱病や躁病,精神分裂病の興奮状態などがその治療対象となった。…

【執着性格】より

…躁鬱(そううつ)病の病前性格として下田光造が提唱した性格。この性格の基礎には一度起こった感情が長く持続するという感情の経過の異状がある。…

【躁鬱病】より

…性格的には社交的,善良,親切,親しみやすいという共通した特徴のある循環気質に属する。このようなクレッチマーの考え方に対して,1930年ころに下田光造が躁鬱病の病前性格として執着性格を提唱した。執着性格の基礎には一度起こった感情が長く持続し,かつ増強するという感情の経過の異常があることに着目し,この異常にもとづく性格特徴として仕事熱心,凝り性,徹底的,正直,几帳面,強い正義感,ごまかしやずぼらができないなどをあげている。…

※「下田光造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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