上野国交替実録帳(読み)こうずけのくにこうたいじつろくちよう

日本歴史地名大系 「上野国交替実録帳」の解説

上野国交替実録帳(交替実録帳)
こうずけのくにこうたいじつろくちよう

断簡

成立 長元三年

原本 東京国立博物館

解説国司藤原家業と新国司同良任との事務引継に当たり、正税官物・官舎等の欠損状況とその理由・責任に関する問答を記した文書の下書。国衙には政庁と国司の館および雑穀倉一五があった。政庁には戸籍・班田図や武具が保管されていたが、すでに多くが失われ、残りも長徳三年の火災で焼失、使用不能になっていた。戸籍の巻数等から群馬郡・甘楽郡各六五〇戸、吾妻郡一五〇戸ほどの郷戸があったと推定される。国分二寺・定額寺は破損がひどく、度縁・戒牒も失われていた。神社は計一三の名と規模が記され、一宮抜鉾・二宮赤城明神社は家業の任期中に修復された。各郡には正倉・郡庁・館等が記されるが、すでに失われていたと考えられる。律令制衰退を示す貴重な史料交替実録帳は国司が任期中に死亡した際に作成されるので、正確には不与解由状案である。

活字本 平安遺文九・「群馬県史」資料編四(写真付)など。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

百科事典マイペディア 「上野国交替実録帳」の意味・わかりやすい解説

上野国交替実録帳【こうずけのくにこうたいじつろくちょう】

上野国における国司(こくし)交替の際の公文(くもん)の草案。1030年頃のものと推定される。当時の上野国の財政状態の破綻や官舎・寺社などの破損状態が記され,その責任の所在について新国司と旧国司の主張がともに記載されていることから,文書の名称は不与解由状(ふよげゆじょう)とするのが正しい。九条家本《延喜式(えんぎしき)》の紙背(しはい)(典籍・記録・文書などの料紙の裏面)に,多数の断簡として伝わる。→解由状紙背文書

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改訂新版 世界大百科事典 「上野国交替実録帳」の意味・わかりやすい解説

上野国交替実録帳 (こうずけのくにこうたいじつろくちょう)

上野国における国司交替の際の公文の草案で,1030年(長元3)ころのものと推定される。国司管轄下の官物・官舎・社寺などの欠失や破損の状態を列記し,その責任の所在について新旧国司双方の主張を記載しており,文書の名称としては不与解由(げゆ)状とするのが正しい。九条家本《延喜式》(東京国立博物館所蔵)の紙背に,多数の断簡に分かれて存在する。《平安遺文》所収。
解由状
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世界大百科事典(旧版)内の上野国交替実録帳の言及

【郡家】より

…郡領(大領・少領),主政・主帳からなる郡司が,案主・税長・鎰取(かぎとり)などの郡雑任を従えて勤務し,郡の徴税と勧農などの行政と司法に当たり,また国府や郡家間の連絡のために伝馬がおかれた。8~9世紀の郡家の構成を知る史料は少なく,律令国家の衰退した11世紀中ごろの《上野国交替実録帳》がまとまった史料として有名。それによれば,郡家は,郡庁,館,厨家(くりや),正倉の四つの部分から構成される。…

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