上調子(読み)うわぢょうし

精選版 日本国語大辞典 「上調子」の意味・読み・例文・類語

うわ‐ぢょうし うはデウシ【上調子】

〘名〙
三味線の高低合奏の時、地の調子よりも完全四度、または完全五度高い音で合奏する三味線。また、その奏者。ふつう、三味線に枷(かせ)を使って振動する弦の長さを短くして演奏する。
② 三味線弾きの芸格で一番低いもの。地調子よりも格の低い演奏者が受け持つので、常磐津清元長唄などでは、これを格付けに用いる。
歌舞伎お染久松色読販(1813)大切「上るり太夫常磐津小文字太夫、ワキ常磐津兼太夫、〈略〉上調子岸沢三五郎」
③ (形動) 声がうわついて高いこと。また、そのさま。
※浮世草子・好色盛衰記(1688)五「外の人の見しをもわすれて、上調子(ウハデウシ)のなげぶし、色まじりの小歌」
④ (形動) (現在は多く「うわちょうし」) 言語、動作などに落ち着きのないこと。うわべだけで、中身のないこと。また、そのさま。うわっちょうし。
※門(1910)〈夏目漱石〉二「不断の生活が急にそわそわした上調子(ウハテウシ)に見えて来る」
⑤ 株の相場が上昇に向かう気配があること。

うわっ‐ちょうし うはっテウシ【上調子】

〘名〙 (形動) 「うわぢょうし(上調子)」の変化した語。
青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏「今度は推量節とか云ふ上調子(ウハッテウシ)俗謡を始めた」

のぼり‐ちょうし ‥テウシ【上調子】

〘名〙
① からだや技術などの状態が、次第によい方に向かっていること。
② 相場に、次第に高くなる様子が現われていること。

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デジタル大辞泉 「上調子」の意味・読み・例文・類語

うわ‐ちょうし〔うはテウシ〕【上調子】

[名・形動]
声がかん高くて、落ち着きがないように感じられること。また、そのさま。うわっちょうし。「上調子なしゃべり方」
落ち着きがなく慎重さに欠けること。うわべだけで中身のないこと。また、そのさま。うわっちょうし。「上調子態度
うわぢょうし

うわ‐ぢょうし〔うはデウシ〕【上調子】

三味線を高低2音で合奏するとき、高音を奏する三味線。また、その奏者。三味線にかせをかけて振動する弦の長さを短くし、低音のほう(本手ほんて)より完全4度、または完全5度高く調律する。

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改訂新版 世界大百科事典 「上調子」の意味・わかりやすい解説

上調子 (うわぢょうし)

三味線の調弦法。常磐津,清元,新内などの江戸浄瑠璃では,その伴奏の三味線の旋律をいっそう美しくするため,別に調弦された高い音域を持つ別の三味線で合奏する。その方法は,たとえば本手の三味線の本調子に調弦された第2弦に,棹の途中に〈枷(かせ)〉を結んだ第2の三味線の第1弦を同じにして二上りに調弦する。これを上調子と呼ぶ。新内節ではとくに高音(たかね)という。また長唄でも唄浄瑠璃に用いられ,さらに《吾妻八景》や《秋色種(あきのいろくさ)》など合の手の多いものでは必ず用いるようになった。一中節でも新しいものでは使う。また上調子の三味線そのものやその奏者をいうこともある。
本調子
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上調子」の意味・わかりやすい解説

上調子
うわぢょうし

(1) 高低合奏に用いる高音三味線またはその奏者,あるいはその調律のこと。基本になる旋律 (地または本手) と合奏して,その装飾効果をねらうため,開放弦を本手より完全4度あるいは5度高く調律して調弦の種類を転じ,結果的に1オクターブ高い旋律の演奏が可能になるようにしたもの。その場合,三味線の棹に「かせ」という小片を結んで弦の振動部分を短くし,高音を出す工夫がなされている。特に豊後系浄瑠璃に多く使われている。新内節では「高音 (たかね) 」という。 (2) 三味線弾きの格づけ用語。豊後系浄瑠璃では,最高位から「三味線」「三弦」「上調子」「上てうし」の順に格づけされている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「上調子」の意味・わかりやすい解説

上調子
うわぢょうし

三味線音楽用語。高低合奏の場合の高音三味線の名称およびその調律名。棹(さお)に小さな器具(枷(かせ))を取り付け、原旋律(本手)の調弦より完全4度または完全5度高く調律される。原旋律と同じ旋律を1オクターブ高く奏するのが目的で、江戸浄瑠璃(じょうるり)(河東節(かとうぶし)・常磐津(ときわず)など)に多く用いる。新内節では高音(たかね)とよぶ。また常磐津・清元ではこの名称を演奏者の格づけに用い、下から順に、上てうし、三絃、三味線と称する。

[渡辺尚子]

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百科事典マイペディア 「上調子」の意味・わかりやすい解説

上調子【うわぢょうし】

三味線音楽用語。2挺以上の三味線の合奏において,本手の三味線の調弦に対して,完全5度または4度高く調弦された三味線の調弦名およびその奏者。本手の旋律と同じ旋律を1オクターブ高く奏する。江戸系の浄瑠璃,長唄で用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の上調子の言及

【替手】より

…とくに箏に移されて,三味線の原曲と合奏されるものを替手式の箏の手という。同一楽器の本手と替手の合奏には,共調子のものと異調子のものとがあるが,長唄の場合,共調子の別旋律をとくに替手といい,異調子の場合は上調子(うわぢようし)となることが多い。替手には,曲の一部の替手と全曲の替手とがある。…

※「上調子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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