上米(読み)うわまい

精選版 日本国語大辞典 「上米」の意味・読み・例文・類語

うわ‐まい うは‥【上米】

〘名〙
① 古く、寺社が年貢米幾分初穂として寄進させた米。じょうまい。口米(こうまい・くちまい)
※施無畏寺文書‐二・明応九年(1500)九月一八日・藤原則泰田地寄進状「毎年足四百文、為上米沙汰可有者也」
通行税一種近世諸国の年貢米が神領などを通過する時に運送船から取った金。
浮世草子日本永代蔵(1688)四「毎日の入舟判金一枚ならしの上米(ウハマイ)ありといへり」
③ 仕事や売買などの仲介をする者がはねる、代金・賃金の一部。また、それを取ること。うわまえ。
※浄瑠璃・国性爺後日合戦(1717)三「それ、其真先な瞟(ひがら)めがうはまいに取上、十分一も我々が手に付させず」

あげ‐まい【上米】

〘名〙
中世領主の特定の用途のため荘園から毎年上納される米。
※長命寺文書‐応安六年(1373)四月一三日・行房貞安連署契約状「然於彼田地上米者、為灯油料脚、御寄附于長命寺後、于今無違論地也」
江戸時代、幕藩領主の財政窮乏を緩和する目的で、幕府が諸大名に、諸藩主が家臣に課した上納米。幕府は将軍吉宗の享保七年(一七二二)諸大名の参勤交代を緩和し、その代償として知行一万石に百石の割で上納させた(享保一六年廃止)。尾張藩では元祿初年から藩士に対し、高百石に二石前後を断続的に課した。〔御触書寛保集成‐三〇・享保七年(1722)七月

じょう‐まい ジャウ‥【上米】

〘名〙 上等の米。よい米。また、正米(しょうまい)を取引する時の標準値段をつけるため、上中下の三段階に分けた、その上に当たる米。
譬喩尽(1786)三「鼠臭ひ飯といふことあり上米(ジャウマイ)の飯をいへり 訳不解」
※太政官(1915)〈上司小剣〉二「俺んとこの米は鮓米の上等よりまだ上等や、俺は其の上米さへ喰うてるとええんや」

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デジタル大辞泉 「上米」の意味・読み・例文・類語

うわ‐まい〔うは‐〕【上米】

寺社へ寄進した年貢米の一部。
江戸時代、米穀などの輸送物資に課した通過税
仕事や売買の仲介をする者が取る、賃金や代金などの一部。手数料。うわまえ。
「―に取り上げ、十分一じゅうぶいちも我々が手に付けさせず」〈浄・国性爺後日〉

あげ‐まい【上米】

江戸時代、幕府の財政窮乏を救うための政策。享保7~16年(1722~1731)に実施。大名から石高1万石について百石ずつの米を上納させ、代わりに、諸大名が参勤交代で江戸に在住する期間を半年に短縮した。

じょう‐まい〔ジヤウ‐〕【上米】

上等の米。

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改訂新版 世界大百科事典 「上米」の意味・わかりやすい解説

上米 (あげまい)

江戸幕府が1722年(享保7)7月から財政難を切り抜けるため,諸大名に対して高1万石につき100石の割合で上納させた米。元禄以来,破綻をきたした幕府財政は,22年に至り旗本・御家人の切米・扶持米支給にも窮したので,享保改革の年貢増徴・新田開発の効果があがるまでの応急措置として上米が行われた。米は春秋2度に半分ずつ,大坂か江戸の米蔵に納入し,米で納められないときは張紙値段による金納とした。上米総額は年間18万7000石余で,この代償として参勤交代の江戸在府期間が半減され,外様・譜代の区別なく3月,9月交代とした。尾張家,紀伊家は2000石,水戸家は1000石,参勤交代をしない大名は規定の3分の1,幕府役職大名もわずかの上米を納めさせられた。上米は幕府への役儀として課せられ,御手伝普請は中絶した。全大名領を課税対象とした点で,幕藩関係における画期的な政策であったが,財政状態が回復した31年廃止され,参勤交代制も旧に復した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「上米」の意味・わかりやすい解説

上米
あげまい

江戸時代、財政窮乏を理由に、幕府が諸藩に、また藩主が家臣に対して課した献上米。享保(きょうほう)の改革の一施策として、1722年(享保7)8代将軍徳川吉宗(よしむね)が諸大名に課した例が有名である。これは1万石につき100石の上米を命じたものであったが、この制度の施行により幕府は年間18万7000石の上納米を得た。この額は当時の幕府収入の約1割3分にあたり、旗本、御家人(ごけにん)への給米の5割強を占めたといわれる。しかしこの制度が、参勤交代制の江戸在府期間の半減化(1年を半年に短縮)を伴ったものであったため、家康以来の祖法を変えると反対する意見も多かった。このため幕府財政がいちおう安定した1731年(享保16)に廃止され、参勤交代制も旧に復した。

[大石 学]

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百科事典マイペディア 「上米」の意味・わかりやすい解説

上米【あげまい】

1722年,徳川吉宗が幕府財政の窮乏を救うため,享保改革の一つとして諸大名から1万石につき100石の割合で上納させた米。この代償として大名の参勤交代制を緩和,在府期間を半減し,半年在府・1年半在国とした。1731年廃止され,参勤交代も旧に復した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上米」の意味・わかりやすい解説

上米
あげまい

江戸幕府が諸藩に対し,また藩が家臣に対して上納させた米。享保の改革の際,幕府財政再建のため諸藩に1万石につき 100石の割合で差出させ,その見返りとして,諸大名の参勤交代で江戸に在府する期間を半分にし,負担を緩和したのが,有名な上米の制である。諸藩にも,財政難解決の手段として家臣の俸禄米の一部を上納させる上米,役米,半知,借知などの制度があった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「上米」の解説

上米
あげまい

江戸中期,享保の改革の一政策
8代将軍徳川吉宗が,1722(享保7)年幕府の財政難打開の緊急措置として実施。大名に石高1万石につき100石ずつの米を幕府に上納させ,かわりに参勤交代での江戸滞在期間を半年に半減するもので,いちおうの効果をあげ '31年廃止。諸藩でもこれ以前から家臣の俸禄の一部を上納させた例がある。

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