上座部(読み)じょうざぶ

精選版 日本国語大辞典 「上座部」の意味・読み・例文・類語

じょうざ‐ぶ ジャウザ‥【上座部】

〘名〙 部派仏教長老派のこと。ブッダ死後、一〇〇~二〇〇年後頃に起こった教団分裂で生まれた二派のうち戒律・伝統を厳格に守ろうとした側。これに対して戒律などについて柔軟な考えをもった改革派の側を大衆部という。現在のスリランカタイ仏教は、この上座部の系統を引く。
顕戒論(820)上「僧徒万余人。並皆遵学上座部法

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デジタル大辞泉 「上座部」の意味・読み・例文・類語

じょうざ‐ぶ〔ジヤウザ‐〕【上座部】

仏滅の100年後に教団が二つに分裂したうちの保守派。また、それがさらに分裂してできた諸部派の総称南アジア諸国の仏教はこの流れをくむ。→僧祇そうぎ1

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改訂新版 世界大百科事典 「上座部」の意味・わかりやすい解説

上座部 (じょうざぶ)

仏教部派の一つ。仏滅100年ごろ仏教教団は上座部と大衆部(だいしゆぶ)の二つに分裂した。これは根本分裂と呼ばれ,部派仏教の時代の幕開けとなった。サンスクリットでスタビラ・バーダSthavira-vāda,パーリ語でテーラ・バーダThera-vādaという。根本分裂の原因については南・北両伝で大きな相違がある。南伝の《島史(ディーパバンサDīpavaṃsa)》《大史(マハーバンサMahāvaṃsa)》によれば,分裂の原因は十事問題である。十事とは従来の教団の規則(戒律)を緩和した十の除外例であり,この中には〈金銀を蓄えてもよい〉という条項も入っている。この十事を認める進歩派は,多人数であったので大衆部と呼ばれ,この除外例を認めない厳格派は少人数で長老上座が多かったので上座部と名づけられたという。一方,北伝の《異部宗輪論》によると,その原因は五事問題であったという。五事とは,修行者の達する究極の境地である〈阿羅漢(アルハットarhat)〉の内容を低くみなす五つの見解のことである。この五事を認めたのが大衆部となり,反対したのが上座部となった。

 根本上座部は《異部宗輪論》によれば雪山(せつせん)部(ハイマバタHaimavata)とも呼ばれたという。上座部の教義は明らかではないが,その後200年してこの部派はさらに分裂を繰り返し,その中の犢子(とくし)部,化地(けじ)部,説一切有(せついつさいう)部,法蔵部,経量部などは精緻にして特色あるアビダルマ(論蔵)を構成して,部派仏教(小乗仏教)の展開に大きく貢献し,仏教思想全体に多大な影響を与えた。
大衆部
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百科事典マイペディア 「上座部」の意味・わかりやすい解説

上座部【じょうざぶ】

小乗仏教の源流となった一派。サンスクリットのテーラーバーダの訳。釈迦没後100年目のころ,進歩派の大天比丘(だいてんびく)が唱えた5ヵ条の教義を契機として,教団は保守派の上座部と進歩派の大衆(だいしゅ)部に分かれた。上座部からはその後,説一切有部が分かれ,さらに8派に分かれた。
→関連項目インドシナ小乗仏教タイ[人]仏教マハーボディ・ソサエティ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上座部」の意味・わかりやすい解説

上座部
じょうざぶ
theravāda

初期仏教以来の部派の一つ。釈尊の滅後 100年あまりのときに戒律に関する問題が原因となって,仏教教団は分裂したが,戒律に除外例を認めようとする進歩的な出家修行者から成る大衆部に対し,戒律に例外を認めず厳格に遵守することを主張した保守的な出家修行者たちの一派を上座部という。この2派は,その後さらに分裂するが,上座部系統のなかでは,説一切有部犢子部 (とくしぶ) ,正量部,化地部経量部などが重要なものである。現在スリランカ,ミャンマー,タイなど南アジアに残っている仏教は,みずから上座部と称している。

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世界大百科事典(旧版)内の上座部の言及

【説一切有部】より

…小乗仏教の上座部から分派した一部派。サンスクリットでサルバースティバーディンSarvāstivādinといい,有部と略称される。…

【大衆部】より

…これを仏教教団の〈根本分裂〉という。前者は大衆部と称し,後者は上座部と呼ばれ,その後分裂を繰り返し,18部あるいは20部に分派した。なお大衆部は,玄奘(602‐664)や義浄(635‐715)の時代まで四大部派の一つとしてインドに存続した。…

【部派仏教】より

…新興の大乗仏教側からは,〈小乗仏教〉とけなされたが,正しくは〈部派仏教〉あるいは〈アビダルマ仏教〉と呼ばれるべきである。釈迦滅後100年,すなわちアショーカ王(前3世紀)のころ,仏教教団は保守的な上座部(テーラバーダ)と進歩的な大衆(だいしゆ)部(マハーサンギカ)とに分裂した。これは戒律や教理の解釈上の意見の対立によって分裂したもので,これを〈根本分裂〉と呼ぶ。…

※「上座部」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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