上巳(読み)じょうし

精選版 日本国語大辞典 「上巳」の意味・読み・例文・類語

じょう‐し ジャウ‥【上巳】

〘名〙 五節供一つ。三月三日の称。古く中国で、はじめ三月の初めの巳(み)の日を上巳とよび、魏晉以後は三月三日を上巳として、みそぎをして不祥を払う行事が行なわれたのにならって、日本でも朝廷・貴族の行事として三月三日に川辺に出て、はらえを行ない、宴を張る(曲水の宴)ならわしであった。また、民間では古くから婦女子の祝い日として草餠・桃酒・白酒などを食したが、のちこの日にひな祭をするようになった。桃の節供。重三(ちょうさん)。じょうみ。《季・春》
懐風藻(751)「背奈王行文。二首。〈略〉五言。上巳禊飲、応詔一首」 〔周礼注‐春官・女巫

じょう‐み ジャウ‥【上巳】

〘名〙 (「み」は「巳」の訓読み) =じょうし(上巳)
※歌舞伎・鏡山錦栬葉(加賀騒動)(1879)序幕「御家例として御武運長久祈念の為めに上巳(ジャウミ)の御社参」
夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部「旧暦三月の好い季節を迎へて見ると、あの江戸の方で上巳(ジャウミ)御祝儀を申上げるとか」

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デジタル大辞泉 「上巳」の意味・読み・例文・類語

じょう‐し〔ジヤウ‐〕【上×巳】

五節句の一。陰暦3月の最初の日。のちに3月3日。古く、宮中ではこの日に曲水の宴が行われた。また、民間では女児の祝い日としてひな祭りをするようになった。桃の節句。ひなの節句。重三ちょうさん。じょうみ。 春》

じょう‐み〔ジヤウ‐〕【上×巳】

じょうし(上巳)

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百科事典マイペディア 「上巳」の意味・わかりやすい解説

上巳【じょうし】

五節供の一つ。上巳は旧暦3月上旬の巳(み)の日で,この日の行事が3月3日に固定し,雛(ひな)の節供をさすようになった。水辺に出て禊(みそぎ)をした中国古代の風が伝えられて巳の日の祓(はらえ)となり,人形(ひとがた)を水に流して穢(けが)れを祓ったが,この人形が雛人形になり,雛祭になったという。→節供
→関連項目曲水の宴

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上巳」の意味・わかりやすい解説

上巳
じょうし

じょうみ,重三 (ちょうさん) ともいう。五節供の一つ。陰暦3月初の巳の日,のちに3月3日に行われた。水上に觴 (さかづき) を流して祓除する中国の風習が日本に伝来し,平安時代に朝廷の年中行事として曲水の宴や童戯として雛遊びが行われるようになった。桃の節供,雛の節供ともいう。 (→三月節供 )  

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「上巳」の解説

上巳
じょうし

「じょうみ」とも。旧暦3月の最初の巳(み)の日。中国では古くから水辺で禊(みそぎ)や祓(はらえ)を行い曲水(きょくすい)の宴を設けた。魏(ぎ)の時代に上巳は3月3日に定着。日本でもこの風俗が伝来し,雑令で3月3日を節日とし,奈良時代から内裏で曲水の宴が催された。平安時代に貴族の邸でも曲水の宴が行われ,また上巳の祓も盛んに行い,祓の具として人形(ひとがた)に罪や災厄を託して河川に流した。後世の流し雛はこの遺習という。

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普及版 字通 「上巳」の読み・字形・画数・意味

【上巳】じようし

桃の節句。

字通「上」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の上巳の言及

【節供(節句)】より

…小豆粥を食べる正月15日を粥節供,稲刈り終了の日を刈上げ節供,年木伐りの日を柴節供などといって祝う地方があるのも,これらの日がハレの日と考えられているからである。正月7日(人日(じんじつ),3月3日(上巳(じようし)),5月5日(端午(たんご)),7月7日(七夕),9月9日(重陽(ちようよう))の五節供(五節句)は中国から伝えられ,江戸時代に民間に普及したものであるが,現在みるこれらにもなんらかの神祭の意味を認めることができる。なお,節供の語は節の日の供え物がその日を代表するようになったとする考えがあり,おせち(御節)料理は正月に限らず本来は節の日一般の食べ物を指す語だったといわれている。…

【雛祭】より

…この日の行事は雛人形を飾り祭るものと,山遊び磯遊びとに大別できる。雛人形を飾り祭るのは,中国伝来の3月上巳(じようし)の行事と日本に古くからある人形(ひとがた)によって身をはらおうとする考え,および貴族の幼女の人形遊びとが結合して,室町時代ごろに一応の形を整えたといわれる。そして江戸時代に五節供の一つに加えられるに及んで,上流社会において現在みるような雛壇での飾りつけが完成するなどいっそうの整備がなされ,しだいに華やかになり,かつ地方や民間へも普及していったのである。…

※「上巳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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