上・逆上(読み)のぼせる

精選版 日本国語大辞典 「上・逆上」の意味・読み・例文・類語

のぼ・せる【上・逆上】

[1] 〘他サ下一〙 のぼ・す 〘他サ下二〙
① 低い所から高い所へ移動させる。
※竹取(9C末‐10C初)「あらこに人をのぼせてつり上げさせて」
上流へ向けて進める。
万葉(8C後)一・五〇「真木の嬬手(つまで)を 百足らず 筏に作り 泝須(のぼス)らむ」
③ 人や物を地方から都へ送りやる。
平家(13C前)八「西国よりいそぎ人をのぼせて」
④ 貴人のもとへ来させる。
※夜の寝覚(1045‐68頃)三「上の例ならぬ御気色を、見捨奉りにくくおぼしたれど、そそのかいてのぼせ奉り給を」
⑤ 位をひきあげる。
⑥ いい気にさせる。おだてる。
※評判記・色道大鏡(1678)二「たとひわやくなるつれありてのぼするとも、いやさにはあらず」
⑦ 取り上げて示す。物事を公の場に出す。「話題に上せる」「食膳に上せる」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一〇「金銀収受の数及び経費の数を簿に上せけり」
⑧ ある事を頭に浮かべる。
星座(1922)〈有島武郎〉「一人の女を意識に上せて座興にしようとしてゐる人見の軽薄さ」
[2] 〘自サ下一〙 (逆上) (血を頭にのぼせる意)
頭部や顔が熱くぼうっとなる。上気する。
咄本・さとすゞめ(1777)猿廻し「さるまわし、のぼせて鼻血をいだせば」
感情の高まりで、ふだんの落ち着きを失う。血迷う。
怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉二「如何(どう)した風の吹廻しで彼様(あんな)奇麗な殿御此処へ来たのかと思ふと、カッと逆上(ノボ)せて」
③ 夢中になる。特に、色恋に熱中する。
人情本春色辰巳園(1833‐35)後「己ばっかり惚込(ノボセ)てゐるやうだが、まさかそうでもねへヨ」
④ いい気になる。思い上がる。「一度成功したくらいでのぼせるな」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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