上・揚(読み)あげ

精選版 日本国語大辞典 「上・揚」の意味・読み・例文・類語

あげ【上・揚】

〘名〙 (動詞「あげる(上)」の連用形の名詞化。他の語の上下について造語要素としても用いられる)
① ものをあげること。⇔下げ
※竹取(9C末‐10C初)「よき程なる人になりぬれば、髪あげなどさうして」
② 「あげた(上田)」の略。
万葉(8C後)一二・二九九九「水を多み上(あげ)に種蒔き稗(ひえ)を多みえらえし業そわがひとり寝る」
③ 手紙などに書く上げ所のこと。
※名語記(1275)六「消息、申状などの位所に某があけとは上とかけり」
能楽邦楽などで声を高くあげてうたうこと。また、高い声でうたう旋律の部分。
※金島書(1436)「(上歌う)『落花浄く降りて郭公初めて鳴き〈略〉』」
※俳諧・両吟一日千句(1679)第三「塞ぎぬる火燵のあけも夕詠〈西鶴〉 二つ三つ子やもえ出る草〈友雪〉」
⑥ (揚) 遊客が芸者遊女を買うこと。また、特に一昼夜通して買うこと。約束。日柄。
浄瑠璃・心中刃は氷の朔日(1709)中「小かんがあげの侍も、一僕つれて、なんとおさが遅かったか、小かんは来てかと腰かくる」
駕籠(かご)の一種。窓がなくて垂れを下げておくような下級のもの。また、その駕籠に乗った代金。
※洒落本・角雞卵(1784か)暁鐘の実情「かごやにいたり『〈略〉あげを二てう出してくんな』」
衣服の裄(ゆき)や丈(たけ)の長いときに肩や腰などを縫い上げてひだをつけ体に合わせること。また、そのひだ。
※雑俳・柳多留拾遺(1801)巻二「竹の子のやうだとあげをおろして居」
⑨ 「あげしお(上潮)」の略。
※歌舞伎・鏡山錦栬葉(加賀騒動)(1879)四幕「もうかれこれ上汐(アゲ)へ廻りますから」
⑩ (揚) 揚げ油で揚げること。また、揚げたもの。特に油揚げのこと。〔本朝食鑑(1697)〕
⑪ 「あげうた(上歌)②」の略。
※車屋本謡曲・相生(1430頃)「上 所は高砂の、所は高砂の、尾上の松も年ふりて」
⑫ 「あげせん(上銭)」の略。
⑬ 株の相場が高くなること。
⑭ 魚群の通る上方の空を海鳥が群れとなって飛ぶことをいう漁師のことば。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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