三環系抗うつ剤(読み)サンカンケイコウウツザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「三環系抗うつ剤」の解説

三環系抗うつ剤

製品名
《アモキサピン製剤》
アモキサン(ファイザー
《アミトリプチリン塩酸塩製剤》
アミトリプチリン塩酸塩(沢井製薬)
トリプタノール(日医工)
《イミプラミン塩酸塩製剤》
イミドール(田辺三菱製薬、吉富薬品)
トフラニール(アルフレッサファーマ)
《クロミプラミン塩酸塩製剤》
アナフラニール(アルフレッサファーマ)
《ドスレピン塩酸塩製剤》
プロチアデン(科研製薬、日医工)
《トリミプラミンマレイン酸塩製剤》
スルモンチール(塩野義製薬、共和薬品工業)
《ノルトリプチリン塩酸塩製剤》
ノリトレン(大日本住友製薬)
《ロフェプラミン塩酸塩製剤》
アンプリット(第一三共)

 脳の神経を刺激し、そのはたらきを活性化する物質(アドレナリンセロトニン)の量を増やし、精神活動を活発にする作用をもつ薬です。おもに精神活動が低下した状態であるうつ病うつ状態の治療に用いられます。服用すると気分が高揚し、不安感や気力の減退が解消されます。ただ、うつ病は不安や焦燥しょうそうを伴うことも多く、たいていは抗不安剤や催眠鎮静剤が併用されます。


 アミトリプチリン塩酸塩製剤イミプラミン塩酸塩製剤クロミプラミン塩酸塩製剤は、遺尿症夜尿症の治療にも用いられます。また、アミトリプチリン塩酸塩は、末梢性神経障害性疼痛クロミプラミン塩酸塩製剤は、ナルコレプシーに伴う情動脱力発作の治療にも用いられます。


①過敏症状(発疹ほっしん・かゆみ、顔や舌のむくみ、じんましんなどのアレルギー症状)がおこることがあります。


 イミプラミン塩酸塩製剤クロミプラミン塩酸塩製剤では、悪性症候群、無顆粒球症、麻痺性まひせいイレウス、てんかん発作、セロトニン症候群、間質性肺炎、好酸球性肺炎、心不全、QT延長、心室頻拍抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、肝障害、黄疸おうだんがおこることがあります。


 アミトリプチリン塩酸塩では、悪性症候群、無顆粒球症、麻痺性イレウス、セロトニン症候群、心筋梗塞幻覚せん妄精神錯乱けいれん、顔・舌のむくみ、骨髄抑制がおこることがあります。


 アモキサピン製剤では、悪性症候群、無顆粒球症、麻痺性イレウス、けいれん、幻覚、せん妄、精神錯乱、遅発性ジスキネジア(舌のもつれ、嚥下えんげ困難など)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、急性汎発性発疹性膿疱症、肝機能障害・黄疸がおこることがあります。


 トリミプラミンマレイン酸塩製剤では、悪性症候群、無顆粒球症、麻痺性イレウス、幻覚、せん妄、精神錯乱がおこることがあります。


 ノルトリプチリン塩酸塩製剤では、無顆粒球症、麻痺性イレウス、てんかん発作がおこることがあります。


 ドスレピン塩酸塩製剤では、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群がおこることがあります。


 ロフェプラミン塩酸塩製剤では、悪性症候群がおこることがあります。


  このような症状がおこったら使用を止め、すぐ医師に相談してください。


②血圧低下、頻脈、ねむけ、不眠パーキンソン症状、口の渇き、便秘、排尿困難、悪心・嘔吐めまい、視調節障害、倦怠感などがおこることがあります。このような症状が現れたら、医師に相談してください。


抗うつ剤は一般的に効果が現れるまで時間がかかります。そのため、ついあきらめて医師から指示された期間の途中で服用を中止してしまう人がいます。しかし、これではかえって治療を長引かせることになり、以後の治療も困難になってしまいます。また、うつ病の症状と抗うつ剤の副作用の症状とは、よく似ているので、病気の治療状況を知るうえでも、医師の指示通り正しく服用し続けることが大切です。


②いろいろな剤型があり、食後の服用が原則です。服用量・服用時間・服用回数・服用期間については、医師・薬剤師の指示を守り、かってに中止、減量・増量しないでください。


 また、内服剤は必ずコップ1杯以上の十分な水で服用してください。


③過去に抗うつ剤で過敏症状が現れたことがある人、緑内障、心筋梗塞の回復初期の人には使用できません。さらに、アミトリプチリン塩酸塩イミプラミン塩酸塩製剤クロミプラミン塩酸塩製剤ノルトリプチリン塩酸塩製剤では、尿閉(前立腺疾患など)のある人、イミプラミン塩酸塩製剤クロミプラミン塩酸塩製剤は、QT延長症候群のある人にも使用できません。


 また、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤使用中あるいは使用中止後14日以内の人にも使用できません。


甲状腺機能亢進症こうじょうせんきのうこうしんしょう躁病そうびょう、排尿困難、眼内圧亢進こうしん、てんかん、脳の器質的障害または統合失調症の素因のある人、衝動性が高い併存障害のある人、自殺念慮または自殺企図の既往のある人、副腎髄質腫瘍(褐色細胞腫、神経芽細胞腫など)のある人、重い肝・腎障害のある人、低血圧のある人、低カリウム血症のある人、高度な慢性便秘のある人には使用量の減量などの配慮や服用にあたっての厳重な注意が必要になるので、あらかじめ医師にその旨を伝えてください。


⑤ねむけ、めまいなどがおこることがあるので、服用中は自動車の運転、高所での作業、激しい運動、暑い環境などは避けてください。


⑥服用中の飲酒によって、効果が過剰に現れます。服用中は禁酒を守ってください。


⑦この薬を使用中に、ほかの薬を使用する必要が生じたときは、必ず医師に相談してください。


 とくに抗コリン剤、気管支喘息ぜんそくの治療に使う薬や、バルビツール酸系催眠鎮静剤ゾニザミド製剤などと併用すると副作用がおこりやすくなり、降圧剤と併用すると降圧作用を弱めることもあります。


 また、抗てんかん剤リファンピシン製剤シメチジン製剤、ベンゾジアゼピン系製剤、セロトニン作用剤ワルファリンカリウム製剤スルフォニル尿素系糖尿病用剤リネゾリド製剤、セイヨウオトギリソウ含有食品などとの併用には注意してください。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

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