三浦哲郎(読み)ミウラテツオ

デジタル大辞泉 「三浦哲郎」の意味・読み・例文・類語

みうら‐てつお【三浦哲郎】

[1931~2010]小説家青森の生まれ。自らの学生結婚を基にした「忍ぶ川」で芥川賞受賞。また「拳銃と十五の短篇」で野間文芸賞、「白夜を旅する人々」で大仏次郎賞など、多く文学賞を受賞している。芸術院会員。他に「じねんじょ」「みのむし」「ユタとふしぎな仲間たち」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三浦哲郎」の意味・わかりやすい解説

三浦哲郎
みうらてつお
(1931―2010)

作家。青森県八戸(はちのへ)市に生まれる。早稲田(わせだ)大学仏文科卒業後文筆を志す。学生結婚をした体験に基づく『忍ぶ川』(1961)により芥川(あくたがわ)賞受賞。以後『初夜』(1961)、『団欒(だんらん)』(1964)、『結婚』(1967)などを刊行。長編小説『海の道』(1970)、『駱駝(らくだ)の夢』(1974)、連作小説集『踊子ノラ』(1974)、『拳銃(けんじゅう)と十五の短篇(たんぺん)』(1976。野間文芸賞受賞)などによって独自な作風を確立する。短編には『冬の雁(がん)』(1980)、『蟹屋(かにや)の土産』(1983)などがある。また、天正(てんしょう)年間の、遣欧使節の若者たちの苦難歳月を描いた『少年讃歌(さんか)』(1982。日本文学大賞受賞)、血族の不幸を凝視した『白夜を旅する人々』(1984。大仏(おさらぎ)次郎賞受賞)、『じねんじょ』(1989。川端康成文学賞受賞)、『愁月記』(1989)、『短篇(たんぺん)集モザイクⅠ みちづれ』(1991。伊藤整文学賞受賞)、『みのむし』(1994。再度川端康成文学賞受賞)、『短篇集モザイクⅡ ふなうた』(1994)、『短篇集モザイクⅢ わくらば』(2000)などがある。日本芸術院会員

[金子昌夫]

『『三浦哲郎短篇小説全集』全3巻(1977・講談社)』『『三浦哲郎自選全集』全13巻(1987~88・新潮社)』『『短篇集モザイクⅠ みちづれ』(1991・新潮社)』『『短篇集モザイクⅡ ふなうた』(1994・新潮社)』『『短篇集モザイクⅢ わくらば』(2000・新潮社)』『『随筆集 母の微笑』(2001・講談社)』『『忍ぶ川』(新潮文庫)』『『少年讃歌』(文春文庫)』『『白夜を旅する人々』(新潮文庫)』『『拳銃と十五の短篇』(講談社文芸文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三浦哲郎」の意味・わかりやすい解説

三浦哲郎
みうらてつお

[生]1931.3.16. 青森,八戸
[没]2010.8.29. 東京
作家。6人兄弟の末子として生まれ,2人の姉が自殺,2人の兄が失踪,1人が難視に悩むという不幸な生い立ちで,「病める血」に思い悩んだ。1950年早稲田大学政治経済学部を中退したが,1953年に同大学第一文学部フランス文学科に再入学,1957年卒業した。在学中に井伏鱒二に認められ,妻との恋愛を描いた『忍ぶ川』(1960)で芥川賞を受賞,以後『恥の譜』(1961),『初夜』(1961)など一連の作で,家系へのおびえと生への意志とを描いた。血の問題からの新生は 2児の親となった夫婦の愛を描く『結婚』(1967)で確認された。生粋の私小説作家と目されたが,実生活から素材を選択して再構成する手法は技巧的である。ほかに,長編『海の道』(1970),連作短編集『拳銃と十五の短篇』(1976,野間文芸賞),長編『少年讃歌』(1982,日本文学大賞),『白夜を旅する人々』(1984,大佛次郎賞),「短篇集モザイク」シリーズの『じねんじょ』(1990,川端康成文学賞),『みちづれ』(1991,伊藤整文学賞),『みのむし』(1995,川端康成文学賞)など。1988年日本芸術院会員。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「三浦哲郎」の解説

三浦哲郎 みうら-てつお

1931-2010 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和6年3月16日生まれ。井伏鱒二(いぶせ-ますじ)に師事。昭和36年「忍ぶ川」で芥川賞。兄姉の自殺や失踪(しっそう)から血の系譜になやみ,それに抗して生きる意志を作品にあらわす。51年「拳銃と十五の短篇」で野間文芸賞,60年「白夜を旅する人々」で大仏(おさらぎ)次郎賞をうけるなど,受賞多数。63年芸術院会員。平成22年8月29日死去。79歳。青森県出身。早大卒。著作はほかに日本文学大賞の「少年讃歌」,川端康成文学賞の「じねんじょ」「みのむし」,伊藤整文学賞の「みちづれ」など。

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百科事典マイペディア 「三浦哲郎」の意味・わかりやすい解説

三浦哲郎【みうらてつお】

小説家。青森県八戸市生まれ。1949年,早稲田大学政経学部に入学するが,50年中退。故郷の中学校での教師生活をへて,早大に再入学,53年,仏文学科を卒業。1961年,《忍ぶ川》で芥川賞受賞。76年,《拳銃と十五の短編》で野間文芸賞,85年,《白夜を旅する》で大佛次郎賞。88年,日本芸術院会員。芥川賞選考委員もつとめた。

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