三方五湖
みかたごこ
福井県西部、三方上中郡若狭町(わかさちょう)と三方郡美浜町(みはまちょう)にまたがる三方湖、水月(すいげつ)湖、菅(すが)湖、日向(ひるが)湖、久々子(くぐし)湖の五湖をいう。国指定名勝。矢筈(やはず)山西麓(ろく)を南北に走る三方断層によって落ちた西側の陥没地にあり、若狭湾国定公園(わかさわんこくていこうえん)の一中心。梅丈(ばいじょう)岳には有料道路レインボーラインが通じ、久々子からは遊覧船が出る。三方、水月、菅の三湖は水面が連続し、水月湖と久々子湖は浦見(うらみ)水道で、日向湖と水月湖は嵯峨隧道(さがずいどう)で通じている。湖水はもと菅湖から東方へ流出したが、1662年(寛文2)の地震で排水が悪くなり、湖岸は洪水に悩まされた。そこで小浜(おばま)藩奉行(ぶぎょう)行方(なめかた)久兵衛(1616~1686)が1662年から1664年にかけて浦見水道(延長144メートル)を開削した。この工事により三方湖岸に24ヘクタールの新田が開発され、生倉(いくら)、成出(なりで)の2集落が生まれた。人夫延べ22万5000余人、金1600余両、扶持米(ふちまい)3000余俵と2年の歳月を要した難工事で、浦見川は恨み川だともいう。嵯峨隧道は寛永(かんえい)(1624~1644)以来改修を重ねて1934年(昭和9)に完成した。日向湖は海水が入り、ブリ、タイを蓄養し、サバ、イワシが釣れる。久々子湖は半淡水でボラがとれ、カキを養殖。最深(34メートル)かつ最大(4.1平方キロメートル)の水月湖は湖底に硫化水素が発生し、菅湖とともに生物はほとんどみられない。三方湖は4メートルと浅いが、ウナギ、フナ、ワカサギなどが多く、漁業権をもつ鳥浜(とりはま)は叩(たた)き網、えり、柴漬(しばづけ)など古い漁法を残す。湖岸はウメ、モモ、ブドウの産地。なお、三方五湖は2005年(平成17)に、ラムサール条約登録湿地となった。
[島田正彦]
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三方五湖
みかたごこ
福井県南西部,美浜町から若狭町にかけて連なる三方湖,水月湖,菅湖,日向湖,久々子湖の 5湖の総称。南部の三方湖,水月湖,菅湖は一連の湖で,かつては氾濫が絶えなかった。小浜藩主酒井忠直の命により寛文年間(1661~73)水月湖と久々子湖の間の丘陵地を開削し,人工排水路の浦見川が完成。これによって三方湖岸約 0.2km2が陸地化し,生倉,成出,田井の新田集落が成立した。水月湖,日向湖間は 1934年嵯峨トンネルで連絡し,さらに排水がよくなった。淡水魚,海水魚に恵まれる。水月湖の西から北岸を久々子湖の笹田にかけて三方五湖レインボーラインが通る。国の名勝に指定され,北岸の梅丈岳とともに若狭湾国定公園に属する。2005年ラムサール条約に登録。
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三方五湖【みかたごこ】
福井県南西部,若狭湾岸の水月,三方,菅(すが),久々子(くぐし),日向(ひるが)5湖の総称(名勝)。前3者は一続きの湖で後2者は丘陵で隔てられる。三方湖のみ淡水湖。《万葉集》に三方の海とみえ,歌学書には歌名所としてあげられる。漁業資源にも恵まれ,江戸時代には鰻などをめぐる出入があった。若狭湾国定公園に属し,特に梅丈岳からのながめは美しい。2005年11月にラムサール条約登録湿地となる。釣・海水浴の適地。早瀬から遊覧船,敦賀駅からバス。
→関連項目気山津|三方[町]|ラムサール条約
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三方五湖
福井県西部、常神半島の基部にある5つの海跡湖の総称。三方上中郡若狭町と三方郡美浜町にまたがって広がる水月湖、菅湖、久々子(くぐし)湖、日向(ひるが)湖、三方湖の5湖で、合計面積は約11平方キロメートル。各湖は水路で結ばれているが、それぞれ塩分濃度や水深が異なり、水の色も微妙に違って見えることから“五色の湖”とも呼ばれる。日本の固有種を含む多様な魚類が生息しており、周辺には水生・湿性植物の群落が見られる。若狭湾国定公園の中核をなし、国の名勝に指定。ラムサール条約登録湿地。
三方五湖
福井県三方上中郡若狭町にある道の駅。国指定名勝の三方五湖のひとつ、三方湖の南西に位置する。
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デジタル大辞泉
「三方五湖」の意味・読み・例文・類語
みかた‐ごこ【三方五湖】
福井県西部、若狭湾岸にある五つの連続する湖。若狭湾国定公園内にあり、三方湖・水月湖・菅湖・日向湖・久々子湖からなる。平成17年(2005)ラムサール条約に登録された。
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三方五湖
若狭湾国定公園を代表する景勝地。五湖周辺と常神半島一帯は国の名勝地に指定されている。2005(平成17)年にラムサール条約指定湿地に登録された。
[観光資源] 久々子湖 | 水月湖 | 菅湖 | 日向湖 | 三方湖
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三方五湖
(福井県三方上中郡若狭町;福井県三方郡美浜町)
「ラムサール条約湿地」指定の地域遺産。
固有魚類生息地。若狭湾国定公園特別地域。若狭湾沿いのリアス式海岸にある湖の集まり
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みかたごこ【三方五湖】
福井県南西部,常神(つねかみ)半島の付け根に位置し,三方郡三方町と美浜町にまたがる三方湖,水月(すいげつ)湖,菅(すが)湖,日向(ひるが)湖,久々子(くぐし)湖の5湖をいう。古く《万葉集》にも〈若狭なる三方の海の浜清みい往き還らひ見れど飽かぬかも〉と詠われ,〈三方の海〉は歌枕でもあった。若狭湾国定公園の観光の一中心で,国指定名勝。〈三方富士〉ともよばれ,眺望にすぐれた梅丈(ばいじよう)岳(400m)に通じるレインボーラインが走り,久々子湖畔の久々子からは遊覧船がある。
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三方五湖
みかたごこ
三方郡の北西部、三方町と美浜町にまたがる五つの湖、すなわち三方湖・水月湖・菅湖(水月湖の一部)・久々子湖・日向湖の総称。常神半島の付根の部分にあたる。三方郡の海岸線とともに若狭湾国定公園の一部をなし、北方を三方五湖レインボーラインが通る。また東岸にはほぼ南北に国道二七号(かつての丹後街道)が走る。三方湖・水月湖・日向湖の三湖は古生層地の陥没湖であり、久々子湖は砂嘴により外海と隔てられたいわゆる潟湖である。なお三方湖・水月湖・久々子湖の三湖を総称して三方湖ともいう。
三方湖 周囲五里二〇丁、面積三六〇町
水月湖(含菅湖) 周囲六里一二丁、面積六一〇町
久々子湖 周囲五里二〇丁、面積一二四町
日向湖 周囲一里五丁、面積九三町三三一歩
「万葉集」巻七の「羇旅作歌」のうちに
<資料は省略されています>
があり、歌学書「五代集歌枕」「八雲御抄」にも「三方海」は若狭の名所として記される。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
世界大百科事典内の三方五湖の言及
【汽水湖】より
…底層部になるほど塩分濃度が高いことが多く,下層の比重が大きくなるので上下の水の循環が行われないため,底の方には酸素のない水が存在することがある。そのため還元状態を示し,福井県の三方五湖や北海道釧路市の春採(はるとり)湖などのように硫化水素が発生する。 日本の代表的な汽水湖としてはラグーンの浜名湖,中海(なかうみ),八郎潟,サロマ湖などがある。…
※「三方五湖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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