三つ物(読み)ミツモノ

デジタル大辞泉 「三つ物」の意味・読み・例文・類語

みつ‐もの【三つ物】

武具で、よろいかぶとの称。
騎射で、流鏑馬やぶさめ笠懸かさがけ犬追物いぬおうものの称。後世流鏑馬の代わりに歩射ぶしゃを加えた。
連歌俳諧で、発句脇句第三の3句。早くからこの3句だけを詠むことが行われたが、近世以降、歳旦さいたんの祝いとして詠まれた。
武家奏者の所持する品物で、太刀折り紙状箱の称。
料理で、口取り刺し身焼き魚、または、椀盛り刺し身甘煮の3品をいう。
三つ身の着物のこと。
《引き解いて、表・裏・中綿の三つに分けて売ったところから》古着のこと。
「―を下女は値ばかり聞いてみる」〈柳多留・四〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「三つ物」の意味・わかりやすい解説

三つ物 (みつもの)

連歌・俳諧用語。連句巻頭の3句である発句(ほつく)・脇(脇句)・第三を独立させたもの。前句に付けて前々句(打越(うちこし))から離れるのが連句の原則であるから,連句の最小単位はつねに3句であるが,ことに巻頭3句は重視された。万句・千句の興行ではあらかじめ三つ物だけを準備したといわれ,西鶴の《生玉(いくたま)万句》はその三つ物集である。宗匠家では元旦に側近の連衆と三つ物を3組よむのが慣習で,歳旦三つ物と称し,俳諧時代には刷物として配られた。
歳旦帳
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の三つ物の言及

【連歌】より

…詩形式の一つ。5・7・5の句(長句)と7・7の句(短句)を交互に複数の作者が詠み進めて一定の句数(普通は100句)で完結させるもの。一人の作者が詠み通す場合(〈独吟〉という)もある。また100句(〈百韻(ひやくいん)〉という)を10回連作して〈千句〉とすることも多い。
[成立]
 記紀歌謡のヤマトタケルと御火焼之老人(みひたきのおきな)との片歌による問答(5・7・7/5・7・7)を連歌の起源とする立場が古来あり,〈新治(にいばり)筑波を過ぎて……〉というヤマトタケルの歌から,〈筑波の道〉が連歌の別称となった。…

※「三つ物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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