だけ【丈】
〘副助〙 体言または活用語の連体形を受ける。
① (「たけ」とも) 程度・限度を表わす。…ほど。…限り。
※浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)中「いきらるるたけ
此世でそはふ」
※それから(1909)〈夏目漱石〉一五「其仕打は父の人格を反射する丈(ダケ)夫(それ)丈(ダケ)多く代助を不愉快にした」
② (①のうち、特に) それ相応に、…にふさわしく、…にふさわしい程度に、の意を表わす。→
だけに。
※浄瑠璃・心中重井筒(1707)中「ちいさいからの馴染(なじみ)だけ我子の様に思はれて」
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)四「さすがは田舎だけ、ものがふ自由だ」
③ それと限る意を表わす。
※雑俳・住吉みやげ(1708)「下駄さへも年玉だけで扁木にのる」
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉二「口頭(くち)に出したのは纔に如此(これ)耳(ダケ)であるが」
[語誌](1)語源は名詞「たけ(丈)」と考えられる。
(2)江戸前期上方語では「伝七殿と名の知れたとは、尋ねて行て恨みのたけを」〔伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)‐四〕のように、名詞としての
用法と思われる例が多い。現代語でも「なるたけ」「ありったけ」のように
清音の形が慣用句の中に残っている。
(3)③の用法は江戸後期上方語で発生。江戸語にまで広がったのは明治以降とされる。
じょう ヂャウ【丈】
[1] 〘名〙
① 長さの単位の一つ。
尺貫法による単位で、一〇尺(三・〇三〇三メートル)にあたる。
※令義解(718)雑「凡度。十分為レ寸〈略〉十尺為レ丈」
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「此の屋のいぬゐの隅の方に、深く一丈掘れる穴あり」 〔礼記‐曲礼上〕
※建久図田帳(1197)大隅国「串良院九十丁三段二丈」
③ 地積を測ること。検地。
丈量。〔春秋左伝‐襄公九年〕
④ 長さ。たけ。
※万金産業袋(1732)四「上州絹。〈略〉幅九寸、丈五丈四尺」
[2] 〘接尾〙
① 男性の名前に付けて、敬意を表わす。
※卓袋宛芭蕉書簡‐元祿元年(1688)四月二五日「卯月廿五日 芭蕉桃青 卓袋丈」
② 歌舞伎俳優など芸人の名前に付けて、敬意を表わす。
※随筆・守貞漫稿(1837‐53)三「芝居俳優及び
浄瑠璃太夫等に物を贈る書にのみ某丈
江と書く」
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デジタル大辞泉
「丈」の意味・読み・例文・類語
じょう〔ヂヤウ〕【丈】
[名]
1 尺貫法の長さの単位。10尺。1丈は、曲尺で約3.03メートル、鯨尺で約3.79メートル。
2 たけ。長さ。「丈の短い反物」
3 「杖2」に同じ。
[接尾]
1 歌舞伎俳優などの芸名に付けて、敬意を表す。「尾上菊五郎丈」
2 男性の名前の下に付けて、尊敬の意を表す。
「これ新兵衛―」〈浄・いろは蔵三組盃〉
たき【▽丈/▽長】
「たけ(丈)」に同じ。
「身―一丈」〈景行紀〉
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丈
じょう
尺貫法の長さの単位。10尺をいう。約3.03メートルに相当する。古代中国の周代から用いられてきた。『説文』によれば「丈丈夫也、周以八寸為尺、十尺為丈、人長八尺故曰丈夫」とあり、周は8寸(後漢(ごかん)の尺で実長約6寸)を1尺としたので、1丈を現在の基準に直すと実質6尺となる。ちょうど一人前の身長分にあたるので、「丈夫」ということばができた。
[小泉袈裟勝]
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じょう【丈】
尺貫法の長さの単位。10尺が1丈。約3.03m。◇「丈」は古代中国の周代から用いられてきた。ただし、周尺では「1丈」は約1.7mで、成人男子の身長にあたるため、立派な男子を「大丈夫」といった。これがやがて「非常にしっかりしている」意に変化し、さらに現在のように「確かである」「間違いない」意に変化して用いられるようになった。
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丈【じょう】
尺貫法の長さの単位。1丈=10尺=100/33m≒3.0303m。
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じょう【丈】
尺貫法における長さの単位。古代中国から,また日本では大宝令以前から用いられてきた。10尺に等しく,1891年制定の度量衡法によれば約3.03m。【三宅 史】
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世界大百科事典内の丈の言及
【尺】より
…したがって1尺は約30.303cmであり,分量単位は1/10尺の寸,以下十進法による分(ぶ),厘,毛である。倍量単位は寸法用と距離・間隔用に分かれ,寸法用の倍量単位は10尺に等しい丈,距離用の倍量単位は6尺の間(けん),60間の町,36町の里である。(2)鯨尺の尺。…
【度量衡】より
… なお度量衡に対応する西欧語は,英語weights and measures,フランス語poids et mesures,ドイツ語Mass und Gewichtなどであって,質量(weights,poids,Gewicht)と長さ・体積(measures,mesures,Mass)との並列という表現になっている。
【史上の度量衡】
中国の《書経》の後につけられた注疏(ちゆうそ)を見ると,〈度はこれ丈尺,量はこれ斛斗,衡はこれ斤両〉とあり,国の法制度としてこれらを等しくしておくのだといった説明がなされている。ここにいう丈,尺,斛(石とも書く)などは,ものごとを数量的に表現するための〈単位〉の呼名である。…
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