万福寺(京都府)(読み)まんぷくじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「万福寺(京都府)」の意味・わかりやすい解説

万福寺(京都府)
まんぷくじ

京都府宇治市五ケ庄(ごかしょう)にある黄檗(おうばく)宗の大本山。山号は黄檗山。本尊釈迦如来(しゃかにょらい)。1661年(寛文1)妙心寺の竜渓性潜(りゅうけいしょうせん)が、明(みん)より渡来した隠元隆琦(いんげんりゅうき)のため、徳川家綱(いえつな)らの莫大(ばくだい)な援助を得て堂宇を創建し、隠元住持していた中国福建省福州府福清県の黄檗山万福寺の寺号をとって万福寺と称した。以来、将軍や諸大名の寄進により堂舎はしだいに増建され、黄檗宗の本山として寺門大いに繁栄した。代々中国からの渡来僧が住持となり、第14世竜統元棟(りゅうとうげんとう)、第17世祖源元明の2人を除いて第21世までこの風が続いた。山内の諸堂はすべて明の様式を模し、三門、天王殿、大雄宝殿、法堂(はっとう)が一直線上に並んで中核をなし、左右に諸堂を配する構成で、隠元、木庵性瑫(もくあんしょうとう)、高泉性潡(しょうとん)、即非如一(そくひにょいち)などの筆になる聯額(れんがく)50余が掲げられている。本尊釈迦如来坐像(ざぞう)および脇士阿難(きょうじあなん)・迦葉(かしょう)などの諸像は明人范道生(はんどうせい)によって制作されたもので、隠元画像とともに国重要文化財に指定されている。そのほか『西湖図』『虎渓(こけい)三笑図』(ともに国重要文化財)など池大雅(いけのたいが)の画跡も多い。また木庵の法嗣鉄眼道光(てつげんどうこう)が13年間を費やして完成した一切(いっさい)経(黄檗版)の版木(はんぎ)4万8275枚は、現在は塔頭(たっちゅう)宝蔵院に収蔵されている。当寺の伽藍(がらん)境内黄檗様(よう)とよばれ、特異なものとして知られる。

[平井俊榮]

『『古寺巡礼 京都9 万福寺』(1977・淡交社)』

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