一須賀古墳群(読み)いちすかこふんぐん

日本歴史地名大系 「一須賀古墳群」の解説

一須賀古墳群
いちすかこふんぐん

[現在地名]河南町東山・大宝一―五丁目・一須賀一帯

葛城山地から北西方向に派生する標高七〇―二三〇メートルの丘陵上に分布する。古墳時代後期の古墳群で、その存在は江戸時代に知られており、「河内屋可正旧記」にも記される。

昭和四一年(一九六六)分布調査結果が発表され、総数が一五〇基に及ぶこと、大別して三グループに区分されることなどが明らかにされた。同四二年開発に伴う古墳破壊事件が起こり、それを契機に同四三―四四年にわたり開発地域の発掘調査が実施された。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「一須賀古墳群」の解説

いちすかこふんぐん【一須賀古墳群】


大阪府南河内郡太子町葉室から河南(かなん)町一須賀・東山にかけての丘陵上に点在する古墳群。270基にのぼる古墳は大半が小規模な円墳で、他に少数の方墳があり、それぞれ数基から数十基ほどにまとまって造営されている。円墳は径15mから20mの小規模なものが多く、木棺直葬の主体部をもつ数基以外は、横穴式石室埋葬の主体部としている。石室内には石棺あるいは木棺を2ないし4基置くことが多く、副葬品では竃(かまど)と甑(こしき)(蒸し器)のミニチュアの炊飯具が特徴的である。出土した須恵器(すえき)からみると、古墳の築造は6世紀の前半に開始され、7世紀初頭から前半には終焉をむかえたと考えられる。祭祀具としてのミニチュア炊飯具から、この古墳群の造営に渡来系氏族がかかわっていたと推定される。磯長谷(しながだに)から一須賀古墳群のある石川東岸一帯は近つ飛鳥(ちかつあすか)とも呼ばれ、6世紀のころに百済(くだら)系の渡来人集団が定着した地とされているが、同じころ、大和政権の新たな勢力として台頭してきた蘇我(そが)氏とこの地域との密接な関係もよく知られている。古墳時代後期における大和政権下の社会状況を知るうえで高い学術的価値を有していることから、1994年(平成6)に国の史跡に指定された。現在は、大阪府立近つ飛鳥風土記の丘として整備・公開されている。近畿日本鉄道長野線喜志駅から金剛バス「阪南ネオポリス」下車徒歩約5分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の一須賀古墳群の言及

【大阪[市]】より

…大阪府中央部にある府庁所在地。近畿地方のほぼ中央を占める大阪平野にあって,淀川河口の大阪湾岸に位置する。大阪の〈阪〉の字は,江戸時代まで坂を使うのが一般的であったが,明治以後阪に統一された。日本では東京に次ぐ経済力をもつ大都市で,西日本の地域経済活動の中枢をなし,大都市圏は大阪府下をはるかにこえて広がり,京都,神戸の都市圏と複合している。24の行政区からなり,市域の面積は212km2,人口260万2421(1995)。…

※「一須賀古墳群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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