一言芳談(読み)いちごんほうだん

精選版 日本国語大辞典 「一言芳談」の意味・読み・例文・類語

いちごんほうだん ‥ハウダン【一言芳談】

浄土各流の高僧中、法然聖光良忠貞慶など二十余師の法語百六十余を雑然と集めたもの。一巻本、二巻本、三巻本があるが、一巻本が原型とされる。編者不明。鎌倉後期の作といわれる。

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デジタル大辞泉 「一言芳談」の意味・読み・例文・類語

いちごんほうだん〔イチゴンハウダン〕【一言芳談】

鎌倉時代の法語集。作者未詳。法然など浄土宗高僧の格言短文を集めたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一言芳談」の意味・わかりやすい解説

一言芳談
いちごんほうだん

浄土往生(おうじょう)を心の支えとして、世俗を捨て去ることを理想とした一遁世者(とんせいしゃ)が、自分の心にかなった法談を編録した書。鎌倉時代後期の成立。主として法然(ほうねん)(源空)の念仏思想の影響を受けた念仏者の法談150余条を収録しているが、教理への関心は薄く、法然の説く本願他力の思想への理解は浅い。しかし、後世(ごせ)を願う念仏によって、名誉や利益に執する心を離れ、現世での生活を、必要の最小限にとどめて過ごすべきことを説いた片言隻句(へんげんせっく)には、世俗の価値観に対する鋭い逆説が語られている。

伊藤博之

『簗瀬一雄訳注『一言芳談』(角川文庫)』『宮坂宥勝校注『日本古典文学大系83 仮名法語集』(1964・岩波書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「一言芳談」の意味・わかりやすい解説

一言芳談 (いちごんほうだん)

鎌倉後期の仏教書。念仏行者の信仰を伝える法語153条を集めたもので,無常の認識と現世の否定に徹すべきことを説くその思想と,簡潔なかなまじりの文章から,中世仮名法語を代表する書とされている。敬仏,法然,明禅ら30余人の法語を収め,《徒然草》に引用されていることから,鎌倉後期の成立と考えられるが編者は不明。先行の《祖師一口法語》と重なる法語が多い。
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旺文社日本史事典 三訂版 「一言芳談」の解説

一言芳談
いちごんほうだん

鎌倉後期の仏教書
成立年代・編者ともに不明。3巻。法然や鎌倉初期念仏僧30余人の言行録。

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