一般条項(読み)いっぱんじょうこう

改訂新版 世界大百科事典 「一般条項」の意味・わかりやすい解説

一般条項 (いっぱんじょうこう)

法の基本的理念を一般的・抽象的に示して法の運用の一般的指針を宣明する規定,あるいは一定の法的効果を発生させるための要件が具体的な内容を持たず抽象的である規定をいう。例えば,基本的人権に関する一般原理を定めた憲法11条,12条,13条(〈すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする〉)などや,またこれらと関連して,民法1条の〈私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ〉(同条1項),〈権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス〉(同条2項),〈権利ノ濫用ハ之ヲ許サス〉(同条3項)などがあり,さらに,〈公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス〉(民法90条)や〈婚姻を継続し難い重大な事由があるとき〉(民法770条1項5号)などがある。

 一般条項は,一方では当の法の運用において遵守されるべき最も基本的な原則を明確にするとともに,他方では,立法当初は予見不可能なさまざまの事態に柔軟に対処することを可能にする。しかし,その反面,法の解釈適用において行政庁や裁判所の裁量余地が広くなりすぎて法的安定性を害する危険性もある。ただ,多くの場合,他の事例との均衡判例蓄積によってある程度の具体的規準が成立していて,一般条項の適用が直ちに全くの自由裁量となるわけではない。なお,刑罰法規に一般条項を設けることは罪刑法定主義に反するとして認められないが,行政法における〈その他政令で定める事項〉などの文言は,概括的に行政権に授権することになるので,権力濫用の危険を伴いやすい。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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