一職(読み)いっしき

精選版 日本国語大辞典 「一職」の意味・読み・例文・類語

いっ‐しき【一職】

〘名〙 遺領遺産のこと。室町後期以後用いられた。知行人がなくなって、あとに残った所領相続対象としてみる時の称。一跡(いっせき)跡職(あとしき)跡目(あとめ)
※玄以法印下知状集‐天正一一年(1583)八月二〇日「当郷之儀。親王様御料所一職付。夫役并諸役等之儀相除之条」

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改訂新版 世界大百科事典 「一職」の意味・わかりやすい解説

一職 (いっしき)

土地に対する多種多様な権利(しき))を一元的に支配掌握すること。中世においては一枚の耕地に下作(げさく)職,作職,名主(みようしゆ)職,領主職などの多様な権利が重層的に存在したが,16世紀の畿内地方ではこれらの職を買得などによってひとつにまとめ,領主-作人の一元的な年貢収納関係を作り出す動きが顕在化した。またこれらの動きとは別に織田信長荒木村重羽柴豊臣秀吉など配下の部将にまとまった地域を〈一職〉に充(あ)て行ったが,これはその地域内の給人(知行地を有する者)の軍事的指揮権,百姓からの夫役(ぶやく)徴収権と職人の動員権など軍事的統率権を与えたものと考えられている。いずれも中世の重層的かつ入り組み合った関係を整理して一元的な支配関係を創設する動向を示すものであり,やがて秀吉の全国統一によって土地と人の支配が全国的に〈一職〉化されるとともに,この言葉は史料上から消滅した。
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