一枚看板(読み)いちまいかんばん

精選版 日本国語大辞典 「一枚看板」の意味・読み・例文・類語

いちまい‐かんばん【一枚看板】

〘名〙
上方歌舞伎劇場の前に掲げる大きな飾り看板。外題(げだい)を勘亭流で大きく書き、その上部に主要な役者の絵姿をかきあらわしたもの。江戸では大名題(おおなだい)といった。また、歌舞伎以外の興行物についてもいうことがある。名題看板。外題看板。
※俳諧・両吟一日千句(1679)第三「贔負にて此まつ俄に太夫ふん〈西鶴〉 おもひつもって一まいかんばん〈友雪〉」
※明治世相百話(1936)〈山本笑月〉名人印象記「三遊亭円朝の一枚看板が木戸口から消えて定連を失望させたのは」
② 歌舞伎などの一座で、その中心となっている役者。転じて、多人数の仲間のうちで、他に誇りうる中心人物。一枚株。
※評判記・古今四場居色競百人一首(1693)為天孫太郎「根本元祖かけねなし、一枚かんばんの御どうけ」
※にごりえ(1895)〈樋口一葉〉一「お力といふのは此家の一枚看板(イチマイカンバン)
ほかに取り柄はないが、たったひとつ他に誇りうるものがあること。また、そのもの。
※苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉二「その一枚看板のたくましい頤鬚に」
④ (武家中間(ちゅうげん)小者(こもの)などに給する法被(はっぴ)を「かんばん」と呼んだところから) 一枚の着物のほか、着がえ、または他に見せられるような着がえがないこと。また、その一枚しかない着物。一張羅(いっちょうら)
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉六「春夏秋冬一枚看板で押し通す」

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デジタル大辞泉 「一枚看板」の意味・読み・例文・類語

いちまい‐かんばん【一枚看板】

4原義
その団体の大立て者。また、大ぜいのなかの中心人物。「劇団一枚看板
人に誇ることができる、ただ一つのもの。
わずかに実直という点を―にして」〈里見弴・今年竹〉
その着物のほかに着替えのないこと。一張羅いっちょうら
「春夏秋冬―で押し通す」〈漱石吾輩は猫である
上方の歌舞伎劇場で、木戸のかたわらに立てた大きな飾り看板。外題げだいを大書きし、上部に主な役者の絵姿を示した。江戸では大名題おおなだいといった。外題看板。→看板
[類語](1花形名優千両役者スター立て役者大立者座頭ざがしらヒーローヒロインアイドルカリスマ人気者売れっ子はやりっ子寵児/(4看板立て看板立て看プラカード金看板表看板

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