精選版 日本国語大辞典 「一手」の意味・読み・例文・類語
ひと‐て【一手】
〘名〙
① 一方の手。片手。隻手。
② 片手で握れるほどの分量。
※咄本・座笑産(1773)鴨「うしろからねぎ一手(ヒトて)ながれて行き」
④ ひとつにまとめること。一括すること。ひとまとめ。
※古本説話集(1130頃か)八「むかしいまの人を、ひとてにぐして、申たる也」
⑤ 一組。一隊。また、片方。一方。
※今鏡(1170)六「世にあひたる人にて、通季、信通とて、ひとてにておはせしに」
⑥ 一回のわざ。一度の手並。
(イ) 舞や音曲などの一曲・一番。
※義経記(室町中か)八「一手舞ふて東の方の賤しき奴原に見せん」
⑦ ひとつの手口。ひとつのやり方。
※古文真宝笑雲抄(1525)二「これめづらしき文のかきやうなり一手かはり面白と云ぞ」
⑧ 同一の種類。一種類。ひといろ。
⑨ 他にまさるわざ、技量。また、それから生ずる効果。
※今昔(1120頃か)三「此の弓に箭一手を取具し」
いっ‐て【一手】
〘名〙
① 碁や将棋や双六などで、石や駒を一回動かすこと。ひとて。〔運歩色葉(1548)〕
② 一つの技。すぐれた技術。
※花上集鈔(16C頃)下「安道は一手(テ)ある物かな。〈略〉天性上手であったぞ」
※浮世草子・武道伝来記(1687)六「弟矢(をとや)と一手(テ)にまがひなき証拠に立帰りて」
④ ある方法、手段のみに徹すること。
※煙管(1933)〈新田潤〉「首を振って口を閉ぢる一手に出た」
※室町殿日記(1602頃)一〇「三十六人一手につくりて魚鱗にならび」
⑥ 自分一人に手段・権利などを集中すること。独占。
※文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉二「全国の政権を一手に握り」
⑦ 櫓(ろ)二挺をいう。〔和漢船用集(1766)〕
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