一品経(読み)いっぽんきょう

精選版 日本国語大辞典 「一品経」の意味・読み・例文・類語

いっぽん‐きょう ‥キャウ【一品経】

〘名〙 法華経二八品を一品ずつ独立させて一巻仕立ての軸にしたもの。他の経にいうこともある。一巻経(いちかんぎょう)
台記‐康治元年(1142)三月一五日「依一品経、両院以下、貴所皆下給也」

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デジタル大辞泉 「一品経」の意味・読み・例文・類語

いっぽん‐ぎょう〔‐ギヤウ〕【一品経】

《「いっぽんきょう」とも》
法華経などの写経の際、多くの人が一品ずつ分担して書写すること。
法華経二十八品を一品ずつ各一巻に仕立てたもの。また、その一品ずつを仏前読誦どくじゅすること。

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改訂新版 世界大百科事典 「一品経」の意味・わかりやすい解説

一品経 (いっぽんきょう)

仏教経典章節(品(ほん)という)ごとに1巻に仕立てた写経。遺品のうえからはほとんど《法華経》に限られる。《法華経》は奈良時代以来しばしば写経されたが,藤原道長は1002年(長保4)5月,自邸で《法華経》の1品ずつを講賛する〈法華三十講〉を始行し,以後これを恒例とした。こうしたことが機縁となって,一品経写経が盛んになった。《平家納経》《久能寺経》《慈光寺経》《長谷寺経》(いずれも国宝)など,遺品は優れた装飾経が多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一品経」の意味・わかりやすい解説

一品経
いっぽんぎょう

多数の人に均等の功徳と多くの結縁をもつために,『法華経』二十八品を一品ずつ分担して書写した経。平安時代中頃から鎌倉時代にかけて流行した。高野山金剛峰寺の『紺紙金字経』や『平家納経』『久能寺経』は代表的作品例。

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世界大百科事典(旧版)内の一品経の言及

【装飾経】より

…さらに《法華経》信仰の中で法華八講と呼ばれる法会が盛行し,華美な行事となっていった。また結縁経(一品経)という,《法華経》二十八品を多くの者が分担して書写調巻する儀礼が生まれ,こうした行事の中から経巻装飾は《法華経》を中心に装飾の華美を競うに至った。そうした結縁経の早い例が,《栄華物語》に伝える1021年(治安1)の皇太后子の女房らが行ったもので,〈経とは見え給はで,さるべきものゝ集などを書きたるやう〉だったといわれるが,装飾経が生まれた条件の一つとして,料紙装飾の技術の発達があったのである。…

※「一品経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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