一味(読み)いちみ

精選版 日本国語大辞典 「一味」の意味・読み・例文・類語

いち‐み【一味】

〘名〙
仏語。真実絶対の立場では、すべてが同一で、平等であること。多くは仏の教えについて、時や所や人に応じて多様であっても、結局その趣旨は同一であること。
顕戒論(820)上「政行五常。教信一味
※栄花(1028‐92頃)くもの振舞「罪すすぐ昨日今日しも降る雨はこれやいちみと見るぞ嬉しき」
② 味が単一なこと。同じ味。また、副食物一品だけの質素な料理。
※正法眼蔵(1231‐53)栢樹子「あはれむべし、煙火まれなり、一味すくなし」
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉教育「唯だ一味の蜜を採らんが如くなるべし」
漢方の語で、多くの薬種の中の一品。また、一般に一種類の薬品
※全九集(1566頃)二「単行とは臣使の薬をつれざれども一味にて其功をなす」
※小学化学書(1874)〈文部省〉三「黄金は如何なる強酸にても唯一味にては之を溶すこと能はす」
④ (━する) 同じ目的を持った者が寄り集まって、仲間となること。また、その人々。味方。同志現代ではもっぱら悪事を企てる仲間をいう。
平家(13C前)四「抑(そもそも)北嶺は円宗一味の学地」
※浄瑠璃・平家女護島(1719)三「一味して戦場に討死するも死は同じ」
⑤ 同じたぐい。同類
太閤記(1625)四「此属(このたぐひ)は皆、一犬吠虚万犬伝実と、一味之浅智なるべし」
⑥ 一種の味わいや趣のあること。
※俳諧・笈日記(1695)中「両湖の十のさかひも、涼風一味のうちに思ひためたり」

ひと‐あじ ‥あぢ【一味】

〘名〙 味の微妙な加減具合。比喩的にも用いる。「前回作品とは一味違う」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「一味」の意味・読み・例文・類語

いち‐み【一味】

[名](スル)
同じ目的をもって寄り集まった仲間。同志。また、そのような仲間に加わること。現代では、主に悪事を企てる場合に用いる。「一味に加わる」「陰謀一味する」「盗賊一味
一つの味。また、副食物が一品であること。
漢方で、多くの薬種の中の一品。「甘草かんぞう一味を加える」
ある味わいがあること。どことなく趣が感じられること。「一味の涼風」
仏語。現象は多様であるが、実はすべて同一で、平等無差別であるということ。また、仏の救いは平等であること。
[類語]仲間同輩朋輩ほうばい同僚同志同人メート同士常連一派徒党味方翰林盟友同腹相手友達友人ペンフレンドペンパル朋友友垣酒徒茶飲み友達ルームメート畏友知友知音親友心友仲良し良友悪友戦友校友同窓生学友同級生級友クラスメート同窓同期同期生同期の桜社友僚友寮友政友詩友亡友

ひと‐あじ〔‐あぢ〕【一味】

ちょっとした味の加減。比喩的にも用いる。「一味足りない汁物」「一味違うドラマ」

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普及版 字通 「一味」の読み・字形・画数・意味

【一味】いちみ

これだけ。ひたすら。宋・陸游〔独り遯に至りて暑を避く~〕詩 客來るも笑ふこと(なか)れ、の陋なるを 占め盡す、炎天一味の涼

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